日本には大学が全部で768校(2018年度)。その中で総合商社が採用対象と見ているのはわずか20大学程度しかないということだ。しかも谷出氏は、就活ルールが廃止された後、ますますこの格差が広がっていくと予測する。

 「かつて日本の企業は、学歴偏重の採用活動を疑問視した時期もありましたが、たとえ学歴不問で採用活動をしても、最終的に選んだ学生は上位校に偏ってしまうことが分かったのです」

 「ですから今はもう初めから、上位校に絞って採用を進めるようになりました」

 谷出氏によれば、大手人気企業では以前にも増して、大学による選別を強めているという。

 「採用対象とする大学の学生には早い段階から情報を送って採用を始め、その他の大学に範囲を広める頃には、ほぼ予定人数を確保しているということも多いのです」

同じ大学で拡がる個人格差

 濱中教授も同じく、大学間の格差はこれから広がっていくと予測する。

 「就活ルール廃止によって仮に企業の採用活動が長期化するなら、その分、企業は学生をじっくりと吟味します」

 「もしかすると、就職に強いと言われてきた一部有名私立大学は、厳しい局面を迎えることになるのかもしれません」

 学生数の多い総合大学で学んできた学生たちは、企業が求める水準に達しなくなる可能性が高いというのだ。

 「反対に知名度は低くても、少人数制の大学で一人の先生にしっかりと教育を受けた学生が、有名私立大学を凌ぐ可能性もあります」

 新卒一括採用の枠組みを即座に変えることは影響が大きすぎるとのことで、経団連に変わって政府が就活スケジュールの指針を出すことを表明しているが、罰則規定がないだけにどれほど守られるかは疑問だ。