企業の教育プログラムに欠けていること

 しかし本来、学生の教育は大学の役割だとすれば、横やりを入れられた形に映る。大学はこうした企業の取り組みは邪魔にならないのか。

 「学生がキャンパスを出て企業の現場を体験するのは、社会学の手法でいうところのフィールドワークと言えます。学生はどんどん外に出ていって社会のことを学んでくればいいと思います」

 「ただ、教育という以上、フィールドワークを終えた後は大学にもどって来てもらいたいのです」

 「そして自らが経験したことを一度整理し、専門領域においてどのように位置づけられるのか分析し、抽象化するところまでやってほしいというのが教育者としての見方です」

 「ですから企業には、プログラムを終えた学生を囲い込んだり、取り込んだりするのではなく、一度大学に戻してもらうようお願いしたいです」

 仮に、学生に刺激を与えることで採用活動の布石とするなら、それは教育とは呼べないということだ。

 ところで大学側は今回の就活ルール廃止をどのように受け止めているのだろうか。

 「就職を控えた学生やその両親の中には、心配している人も少なくないと思いますが、就活ルール自体すでに形がい化していました。私個人としては、極端な影響は出てこないのではないかと見ています」

 「一般論でいえばルール廃止によって企業の採用活動は前倒しになるだろうと思いますが、実際のところ早期化するのかそれとも長期化するのか分かりません。今後の企業の動きを見定めたいところです」

 「たとえば採用関連の行事が平日の昼間に行われ、授業を欠席する学生が目立つようなら、一定のルールを作ることも検討する必要があるでしょう」

 しかし当の学生たちのことを考えれば懸念も残る。