調理器具の燃料であるガスボンベは、重たい上にかさ張るから難儀である。資材小屋の裏手は、まるでお寺の裏手にある墓場のように大小のガスボンベで埋め尽くされる。さらに、調理に使用する飲料水も、ポリタンクで事務所から運び込む。これはトラックで輸送するのだが、際限がなく嫌になる。いつまで続くのかと尋ねるのは愚問である。誰にも分からないのだから。ひとつ言えるとしたら、事務所のポリタンクが無くなるまでである。最近では、これらに加えて、各所に消火器を設置しないといけないから、尚更大変そうである。

テキヤはヤクザか

 筆者がマスコミで話をすると、「暴力団博士」と呼ばれることしばしばであるが、筆者はヤクザの飯を食ったことはない。しかし、テキヤには一宿一飯の世話になったことがある。

 手前味噌で恐縮だが、小倉の商店街でタンカバイに慣れていたお陰で、ほかの三寸より多く売り上げたから、例祭の最終日に親分からわざわざ礼を言われたし、給料袋に5万円ほど多く入っていた。何と、旅人さんから、スカウトまでされる始末である。

 筆者の経験に照らして、テキヤとヤクザは別物であると自信を持って言えるのである。なぜなら、ヤクザなら「縄張り」と称すところを「庭場」と呼ぶ。商売でしかカネを儲けない。恐れるのは、暴対法ではなく食品衛生法であり、保健所に頭が上がらない。かなりシンドイ作業に幹部であっても従事する。

 何より、神農であるテキヤは祀神が違う。テキヤの盃事の儀式には、農業と薬の神である「神農黄帝」の軸を掲げる(ヤクザの場合は「天照大神」を中央に掲げ、「八幡神」、「春日大社」を左右に掲げる)。さらに言うと、筆者は覚せい剤などの薬物使用には鼻が利く方だが、稼ぎ込みの日に15時間労働でへとへとになりながら、違法薬物を用いている若い者を見たことがない。

 ただ、そうはいっても、テキヤがヤクザと没交渉なわけではない。そのあたりは、次回紹介したいと思う。(後編に続く)