シリコンパワー半導体の進化は限界

 これまで、鉄道車両はパワー半導体の進化によって、制御の仕組みを進化させ省エネをしてきた。もちろん、パワー半導体の発展の恩恵を受けたのは鉄道車両だけではない。

 インバーターが乗用車に載せられるほど小型・低価格になり、ハイブリッド車が実現した。

 かつての巨大な抵抗器が電気ストーブのような発熱をしながら制御しているシステムでは、乗用車に載せるなどあり得なかった。

 家電もインバーターを搭載したことで、状況に応じて適切な速度でモーターを回転させることができるようになり、エアコンや冷蔵庫など使用電力が大きい家電の省エネが実現した。エアコンの温度調節機能などは、その恩恵である。

 しかし、シリコンのパワー半導体はそろそろ進化の限界であると言われるようになってきた。これ以上の高効率化ができなくなってきていたのだ。

 シリコンのパワー半導体では、どうしてもロスをなくせない部分があり、まだ発熱は大きな課題であるほどだ。また、スイッチングの高速化も限界がある。

 一方、これまで省エネを進めてきたので、もう十分ということにはならない。今まで以上に省エネ・環境対応の要請は大きくなっている。

 そこで、シリコンよりも半導体としての特性が高いSiCの登場である。

SiCがもたらす革命的変化

 半導体はスイッチであり、ONの時は電流を流しやすく、OFFの時は電流を流さないようになっていなければならない。

 シリコンでは電圧に弱いので、素子を厚くすることで電圧に耐えるようにしていた。しかし、それでは電気抵抗が大きくなる。

 SiCでは電圧に耐える性質がシリコンの10倍なので、同じ電圧に耐える素子を薄くできる。これで電気抵抗が減るが、さらにシリコンよりも半導体で電気を運ぶ役割を果たす不純物を多くできる。

 電気の流れやすいSiCの素子では、電気抵抗が少ないので省エネになる。しかし、それ以上に効果が大きいのは小型化だ。電気抵抗が少ないということは、発熱も少ない。