RPAがもたらすビジネス現場の変化とは

 では、実際にRPAツールを導入することで生じるメリットとは何だろうか。各業界の事例を見ていこう。

●日本生命保険
 2014年12月、RPAテクノロジーズが提供するソフトウェアロボット「BizRobo!」を導入。同ロボットは「日生ロボ美ちゃん」と名付けられ、日本生命保険銀行窓販事業部門に配属された。請求書データのシステム入力作業にRPAを導入することで、1件あたり数分かかっていた処理が20秒ほどに短縮され、集中力の欠如による単純ミスも無くなった。また、単純作業を自動化することでより柔軟性が求められる業務に充分なマンパワーを割けるようになった。

●三菱東京UFJ銀行
 煩雑な定型業務が多いことから、他業界に先駆けてRPAの導入が進んでいた金融業界。中でも同行は、国内においていち早くRPA導入に向けて動いていたメガバンクとして知られている。前出の「BizRobo!」を試験導入し、2年間の先行運用期間中に20種類の事務作業におけるパイロット運用を実施。年間で8000時間分の事務処理作業削減に成功という結果を受け、2015年11月から本格適用へ。これまで人が行っていた「1時間おきに社内システムにアクセスしてデータを取得。チェックしたデータをエクセルにコピーする」といった煩雑な作業を自動化することで、担当者の負担を大きく軽減することができた。

●サッポロビール
 ユーザックシステムの「Autoブラウザ名人」を導入。日々の営業活動や製品開発に活用するために必要な、大手小売業グループが開示しているPOSデータのダウンロード業務を自動化した。ダウンロードすべきデータが大量にあるため、かつては担当者が毎日、あるいは毎週数時間、この作業に付きっきりになってしまっていた。RPAを導入することでミスなく、手作業の頃は取得を諦めていた範囲のデータまで自動でダウンロードできるようになった。

●日本ファシリティ
 ソフトバンクのRPAソリューション「SynchRoid」を導入。多店舗展開する企業の施設管理業務を請け負う同社で発生する、年間約6万件もの事務作業の自動化に成功した。主に自動化したのは、報告書を基幹システムへ登録する作業。人が行うと1回約2~3分かかり、年間で約2000時間かかっていた作業を自動化することで、1回にかかる時間は20秒程度に短縮され、ミスも無くなった。削減された業務時間で顧客サービスの向上を目指すほか、RPAの技術を活かした新規事業領域の開拓も視野に入れている。

●富士運輸
 2018年7月3日から2018年12月21日まで、ドコマップジャパン、NTTドコモと共にNTTドコモのRPAサービス「WinActor」と「AIインフォテイメントサービス」を活用し、ドライバーの日報作成から事務員の確認業務、請求データ発行業務といった、運送業界で生じる一連のルーティン業務を効率化・自動化する実証実験を実施した。これまで事務員はドライバーが手書きで作成した日報と、事前に提出された運行計画書の内容が一致しているかどうか目視で確認していたが、RPAを活用することでクラウド上の日報データと運行計画書の内容を自動で照合し、請求データ確定までの業務を自動化することが可能に。これにより、事務員の事務処理にかかる稼働時間を約50%削減することを目指すと発表された。業界内において深刻化する、人手不足や労働時間の長時間化といった課題をRPAで解決しようという動きが広がっている。

 このように様々な業界でRPAが導入され、業務の改善が図られている。担当者を単純業務から解放し、その分の時間をより重要な仕事に充てられるだけでなく、数をこなさなくてはならない単純作業において発生しがちな人的ミスを防止することができる。作業工数の削減によって時間外労働を削減できれば人的コストも削減できる。業界を問わず、ぜひ導入したいという企業は多いはずだ。