写真:ムツ・カワモリ/アフロ

事実上の決勝戦と言われてはいたものの、下馬評では圧倒的にイラン優位だった。アジアカップ、準決勝である。

それは、ワールドカップ出場時のメンバーが多く残るイランのチーム成熟度の差ももちろんだが、森保ジャパンが今大会で歩んできた道への評価であったともいえた。

蓋を開けてみれば、3-0と日本代表の完勝。選手の言葉からひも解く、指揮官のマネジメント。スポーツジャーナリストの飯尾篤史氏が迫る。

「まるでEUROのギリシャ」という揶揄

 試合前日の監督会見で外国人記者から「(守備重視の戦術でEUROを制した)2004年のギリシャのようだ」と揶揄されたチームの姿は、そこにはなかった。

 あったのは、アジア最強との呼び声高いイランに対し、真っ向勝負を挑みながらも冷静にファイトし、攻めの姿勢を失わなかった勇敢な姿だった。

 ラウンド16でサウジアラビアを、準々決勝でベトナムを、いずれも1−0で下し、準決勝進出を決めたが、芳しい内容とは決して言えない。

 総括をすればサウジアラビア戦はあえて相手にボールを持たせ、セットプレーから虎の子の1点を奪ったともいえるが、開始10分間の戦い方を見れば、日本も真っ向勝負を挑もうとしていたことは明らかだった。臨機応変に戦ったと言えば聞こえはいいが、割り切らざるを得なかったという見方もできる。カウンターのチャンスで息の根を止められなかったことも印象を悪くした。

 ベトナム戦も前半、ディフェンスラインからの縦パスを何度もカットされたし、GK権田修一から吉田麻也へのパスが狙われ、決定的なピンチを招いている。後半、疲れの見えたベトナムに対し、パススピードを上げて攻勢に出た日本がPKを獲得して先制したが、結局、その1点にとどまった。

「攻められても余裕があるというか、締めるところを締められている。そういう強さを感じられる」

 長友佑都の言葉はうなずけるものではある。だが、20歳のセンターバック、冨安健洋の言葉のほうが、気になった。