普及の分水嶺「キャズム」を理解しよう

イノベーター理論から見える越えるべき大きな溝とは

松ヶ枝 優佳/2019.1.31

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ハイテク産業等におけるマーケティング戦略に用いられる「キャズム」理論とは?

「キャズム(Chasm)」という言葉を聞いたことはあるだろうか。直訳すると「溝」となるが、マーケティングにおいては新製品やサービスを普及させる際の鍵となる考え方の一つだ。

 キャズム理論は、主にスマートフォンやIoT製品といったハイテク製品を中心に、人々のライフスタイルを一変させるような製品やサービスに適用できる。新機軸の製品を世に送り出す際、キャズム理論を踏まえてマーケティング戦略を立てることで、「滑り出しは好調だったのに、尻すぼみに終わってしまった・・・」という事態を防ぐことができるかもしれない。

 今回は同理論の提唱者、ジェフリー・ムーア(Geoffrey A. Moore、以下ムーア)の著書『キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』(翔泳社、2014年10月)を基に、マーケティングにおける「キャズム」の意味や、キャズムの越え方を押さえていこう。

製品やサービスが普及するには一定の曲線が描かれる

 キャズムの説明に入る前に、まずは前提となる「イノベーター理論」を簡単にさらっておこう。イノベーター理論とは新しい製品やサービスが普及する過程についての理論で、アメリカの社会学者であるエヴェリット・ロジャース(Everett M. Rogers)によって、1962年に提唱された。

 それによると、消費者は需要時期の早い順から以下の5種類に分類されるという。

①イノベーター(革新者)
②アーリーアダプター(初期採用者)
③アーリーマジョリティ(前期追随者)
④レイトマジョリティ(後期追随者)
⑤ラガード(遅滞者)

 市場全体でそれぞれが占める割合は、①イノベーターが2.5%、②アーリーアダプターが13.5%。③アーリーマジョリティが34.0%、④レイトマジョリティが34.0%、⑤ラガードが16.0%となり、釣鐘型のグラフ(ベル・カーブ)を描くことができる。

 このうち、①と②を合わせた「16%」の消費者に新製品やサービスを普及させることが、市場シェアを獲得する上で最も重要であると説いたのが、イノベーター理論だ。