「安心」して働くための「フィード・フォワード」

 同社のようなプロセスをはじめ、カタチはさまざまだが、「ティール組織」のパイオニア企業の多くが、仲間たちが評価する仕組みを導入している。ティール組織の「自主経営」で重要視される価値観からすれば、(「個人の業績」やそれに紐づく1人の上司(管理職)からの評価でなく)会社全体への「貢献度」や仲間からの「信頼」という面からも、同僚からの評価制度を取り入れるのが自然なのだろう。

 半期に1度の上司による成果評価は、前時代組織が従業員に「恐れ」や「不信」を抱かせるモノの代表格だ。個人が「安心」して働くためには、上司1人からの「評価」ではなく即時に受けられる仲間たちからの「アドバイス」が重要なのである。そして、組織を「信頼」して働くには、納得度の高い評価方法が必要なのだ。 

 河西氏は、評価制度の位置づけと今後の抱負を次のように語る。

「評価の趣旨を従来の『報酬の適正配分』から『人材の育成・支援』へシフトすることが、新・評価制度の大きな目的の1つです。そのため、給与水準は高めつつも評価による賞与金額差は小さくする方向であるとともに、面談においては、(結果の評価に焦点を当てる)『フィード・バック』より(未来への解決策に焦点を当てる)『フィード・フォワード』という視点を大事にしています。今後、現場と対話を続けながら、納得感を高めるとともに、目的を実現していきたいです」

 新・評価制度の目的の達成に伴って、同社の「ティール組織」としての進化は加速しそうだ。第3回では、全体性と存在目的という、自主経営以外の「突破口」に触れながら、日本企業の「ティール組織」実践のヒントを考えたい。

(第3回へ続く)