2004年に創業者から後を引き継いでCEOに就任した柴田氏は、事業の黒字化(創業以来ずっと赤字だった)を2008年に実現するとともに、離職率が非常に高い状態にあった組織の風土改善に着手、従業員のやりがいを重視する「自律・分散・協調型」組織づくりに従業員とともに取り組んできた。

 当時は「ティール組織」という概念はなかった。『ティール組織』で紹介されている多くのパイオニア企業と同様*3、組織風土づくりにおける試行錯誤の末、結果的に「ティール組織」的な風土へと近づいていったのだという。

 河西氏は、同社の組織風土について「社内では『自律・分散・協調』という組織が目指す姿を社内で共有し、その文化が浸透していると思います。『ティール組織』という概念は、2018年に刷新した新・人事制度を構築する際に後から知り、当社が目指してきた姿に近いということが分かりました」と自身の実感を込めて話す。

 同社では「ティール組織」的とも言える「自律・分散・協調」という文化を育むと同時に、黒字転換した2008年から10年間成長を続け、売上高は約110億円、主力サービスの利用者は1億人を突破するに至る。また、2016年~2018年の成長期に入社した新卒社員(63名)の退職率は4.8%(3名)と低い水準を維持、現在の正社員数は約140人である。

 普段の仕事では(「やりたい」ことを基準とする)「Willベース」という言葉がよく使われるといい、従業員は自律的に仕事をするため、「上司」という役割は存在しない。そして、リラックスした状態で仕事をする従業員の仕事風景(冒頭写真:ブランコ会議の様子)が印象的だ。

*2:さまざまなデータから、既存の属性にとらわれない与信を行うなど、テクノロジーとビッグデータを活用して新たな信用(Credit)を創造するビジネス領域。

*3:『ティール組織』では、「医療」から「製造」までさまざまな業種の12社の先進事例(パイオニア組織)を積み上げて、具体的な「ティール組織」像をあぶり出している。パイオニア組織は、「ティール組織」というものを目指して組織運営していたわけではないが、結果的に、「相当な試行錯誤の末、驚くほど似たような組織構造と慣行にたどりついている」(同書より)という。