「必ずしも採用と直結しているわけではありません。というのも1、2年生の“超絶優秀層”の学生に今から内定を出したとしても、2年後、3年後までその大学生をつなぎとめておくことは大変で難しいからです」

 「優秀な学生と早い時期に出会い、その学生のキャリア支援や相談を通じて、良い関係を作り、会社のことを知ってもらうということが当面の目的だと考えたほうが正しいでしょう」

 「もちろんつきあいを続ける間にキャリアの相談などに乗ることで、学生側のその会社に対する評価も高くなり、距離も近くなりますから、就職を希望してもらえる確率が高くなるだろうといった思惑はあると思いますが」

日本企業に求められていること

 この日P&Gジャパンのイベントで行われた「戦略的思考セミナー」の中で、印象的なシーンがあった。

 それはP&G が考えるグローバル人材の定義として、

①Thinking
②Leadership
③Ownership

 の3つをブランドマネージャーが示した時のこと。この3要素のうち日本人の強みと弱みを学生に質問する場面があった。

 指名された学生は「日本人は考えることは強いが、②や③は弱いと思う」と答えた。ブランドマネージャーは即座に「正解です」と答え、次のように付け加えた。

 「今回、私たちが一番こだわったのは、③のOwnershipです。みなさんが出したアイデアを具現化し、実行する体験を通じて、目の前の仕事を自分ごととして、やりきる力を身につけてほしいという思いがあります」

 P&Gが1、2年生を対象にビジネスコンテストを行なう理由はまさにそこにある。優秀な頭脳を持つ日本の学生の何を鍛えれば、世界で活躍する人材になれるのか、企業側はそれを伝えようとしている。

 「日本は教育水準が高く、優秀な人材が多いことは世界が認めているところです。その頭脳をいかに生かすかという点で、外資系企業は答えを持っているし、その環境を作ることができるため、優秀な学生が外資系を目指す流れが生まれています」

 「今、日本の企業に求められているのは、古い考え方を改め、優秀な学生たちが働きたいと思える環境を整えることなんです」(谷出氏)

 「失われた20年」を経てもなお、高度成長期に組み上げたビジネスから脱することができない大手企業が、ようやく変わろうとしている。

 だが、世界的な外資系を抑えて優秀な日本の学生を呼び込むにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 では日本の大学はどうか。本来、人材を育成する役割を担うのは大学であるはずだが、グローバルで活躍できる人材を育てるにふさわしい教育環境が整っているのだろうか。

 そもそも大学に入学したての学生に企業が教育プログラムを施すことをどのように感じているのだろうか。

 次回は大学生の就職事情とともに、大学1、2年生の教育と育成に動き出した企業に対する大学側の受け止め方と「グローバル人材」育成の取り組みを取り上げる。