企業が大学1、2年生の教育に動き始めた

 学生たちが企業から学ぼうとする意欲の高まりを受けてか、ここ数年1、2年生を対象にキャリア支援を行なう企業が急増している。

 2018年の4月には、パナソニックでは学生のキャリア観、就業観の醸成を目的とする「Academia」を本格的に開講した。

 学生が未来を選択するうえで必要な情報や考え方などを伝えるために、2017年10月より先行して限定的に開催していたが、より多くの学生向けにオープン化。少人数型の勉強会を定期的に開催するという。

 大手人材情報サービスのマイナビは、2016年から学年不問型のビジネスコンテスト「キャリア・インカレ」をスタートしている。

 日本を代表する企業のほか政党も協賛に加わり、それぞれがテーマを出題。それに対して学生がチームを組み、好きな企業テーマにエントリーするという仕組みだ。

 最後は企業代表チーム同士の戦いとなる決勝戦を開催。その模様はインターネット生中継され、優勝チームには100万円の奨学金が送られるという大イベントである。

 ほかにも産学連携で大学1、2年生を対象に、1か月以上の長期インターンシップの普及に取り組む動きも起きている。

 これまで就活を意識する3年生以上を対象に行われてきたビジネスコンテストやインターンシップは、次第に1、2年生を対象とする方向に移ってきた。

外資系やIT系企業に奪われてきた
優秀人材の獲得を狙う日本の大手企業

 昨年10月、経団連は2021年以降の就活ルールを廃止することを正式に発表した。

 これによって企業が大学生とコンタクトをとる時期の早期化に拍車がかかることが予想されるが、そもそもなぜ経団連は就活ルールを廃止したのか。採用アナリストの谷出正直氏にその背景を聞いた。

採用アナリストの谷出正直氏(撮影:榊智朗)

 「1つは、経団連加盟企業の中で就活ルールを守らない企業があると経団連が批判されるため、悪者になりたくないという事情があります」

 「ただ、それより深刻なのが世界における日本企業の存在感が希薄になっていることへの危機感です」

 「日本企業は今、グローバル競争を勝ち抜く新しいビジネスを展開する必要に迫られています」

 「それには0から1を生み出せる起業家タイプの人材や、国境を越えてグローバルに活躍できる人材が必要です」

 「ところが日本企業がこれまで行なってきた一括採用に代表される日本型雇用制度では、そうした多様な人材を獲得することが難しいのです」

 分かりやすくいえば、経団連加盟企業にとっては優秀な学生を獲得する上で、就活ルールが邪魔になっているという。

 「というのも特に優秀な少数の学生を、経団連に加盟せず就活ルールに縛られない外資系企業やIT企業などが、加盟企業に先んじて早期に囲い込んできたからです」

 「そのため加盟企業が一斉に採用活動を始めた頃には、優秀な学生に会うことさえできない状況になっていたんです」

 「日本の大企業はこれまで従順で、与えられた作業を手際よく効率的に処理できるようなタイプを大量に求めていたわけですが、いよいよ“超絶優秀層”を採りに行きたいと考えるようになったわけです」

 就活ルールに縛られて優秀な学生層を採り損ねてきた大手企業が、優秀な学生層を採用したいという意向を強めたことが、就活ルール廃止に繋がったというのだ。