大谷翔平のメジャー行きに感じたことと・・・

台湾で行われた記者会見では栗山監督が王にユニフォームを着せた(写真:AP/アフロ)

 何より印象的だったのは、にじみ出るその誠実さだ。集まった100人を超える報道陣からは次々と質問が投げ掛けられたが、はぐらかすのではなく、それでいて余計なことはいっさい語らず、一つひとつ自分の言葉で丁寧に答えていた。それは野球に取り組む真摯な姿勢を物語っているかのようで、ファイターズが誠心誠意、彼の獲得に尽力してきたのはやはり正しかったということを確信させてくれた。
 
 そして、台湾プロ野球から、ポスティング制度を利用して海外に移籍する最初の選手になるということが、どれほど大きな意味を持つのか。彼が背負うものの大きさ、その使命を果たそうとする覚悟も、改めて実感させられた。

王や金子弌大などの獲得についても綴った新著「稚心を去る」

 あえて引き合いに出させてもらうが、台湾における王柏融の日本移籍は、日本における大谷翔平のアメリカ移籍以上の、ある意味、歴史的な意味合いの強い出来事だといえるかもしれない。
 
 一年前は「大谷翔平のことをよろしくお願いします」と心から思った。そして今回、王柏融を預かることになり、きっと同じような気持ちでいるに違いない台湾の方々の思いを想像せざるを得なかった。預かるファイターズの責任は重大だ。そして、その彼と一緒に野球ができる、これ以上の喜びはない。

(『稚心を去る』栗山英樹・著より再構成)
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