公式コメントは避ける米国務省のホンネとは

 米国にとってそれほど重要な日韓両国(特に北朝鮮の非核化では両者の協力が必要な、この時期に)がこのまま、いつまでも角突き合わせている状況が米国にとっていいわけがない。

 それにしては様子がどうもおかしい。トランプ政権は現在まで日韓関係の険悪化について公式には一切言及していない。

 筆者は米国務省報道担当者にメールを送り、コメントを求めた。しかし、返ってくるのは自動応答メールのみ。

 「米連邦政府は現在シャットダウン(閉鎖)状態にあり、本省も事務軽減を行っている」

 つまり人出不足であなたの問い合わせにはお答えできないというのだ。

 確かに予算権限を持つ下院では先の中間選挙で民主党が過半数を占めた。議会の承認を得ないと政策が遂行できない。

 トランプ政権は連邦政府関連予算案が議会を通過成立しない限り、政府を動かすカネがない。各省庁も一部職員を休ませたり、自宅待機させざるを得ないわけだ。

 とはいえ、外交をつかさどる国務省のメディア向け広報活動にまで本当に支障をきたし始めたとは・・・。もはや「超大国」とは言いがたい。

トランプ大統領は「日韓」と「日米」とを分けて考える

 元米国務省高官の一人が筆者にこうコメントしている。

 「国務省の自動応答はあくまでも言い訳だよ。トランプ政権が日韓の問題についてコメントしない理由は2つある」

 「一つは徴用工問題にしてもレーダー照射問題にしても、米政府が何か言えば、日韓どちらかの肩を持ったとして大問題になりかねない。日韓の問題は極めてセンシティブだ」

 「もう一つの理由は、トランプ政権では日韓を含めた東アジア・太平洋担当国務次官補が空席*1になったままだし、日韓双方に送った現在の大使たちも前任大使*2に比べるとトランプ大統領との間に距離がありすぎる」

 「両大使もトランプ政権内での影響力はほとんどないのが現状だ」

 「つまり日韓の大ゲンカが米国にとっていかに重要か、大統領には届いていないんだ。もっとも届いたとしてもトランプ大統領がことの重大さが分かるかどうか、は疑問だけど。(笑)」

*1=スーザン・ソーントン国務次官補代行が2018年7月に辞任後、W・パトリック・マーフィー首席国務次官補代理が事実上の代行をしている。

*2=バラク・オバマ政権時代にはキャロライン・ケネディ駐日米大使はオバマ大統領と極めて親しく、ジョン・ケリー国務長官とは密接な関係にあった。また当時、駐韓米大使だったマーク・リッパート氏は大統領選挙中からオバマ氏の側近として仕え、政権発足後は国家安全保障会議首席補佐官や国防次官補(東アジア太平洋担当)を歴任。ケネディ氏は日韓摩擦の解消ではオバマ大統領を動かした。