ちなみにアエロコンポジット社は、米国の旧サイテック製のTX1100という炭素繊維のテープとEP2400というエポキシ樹脂を使用する。

(サイテックはベルギーのソルベイ社に買収されているが、これらの材料は米国の旧サイテック社の工場で生産)

 テフノロギヤ社は米国ヘクセル社のプリプレグを使用する。

 なお、炭素繊維を供給するメーカーとして、一部の報道で日本の東レの名が挙がった。航空機の主力となる材料以外で、米国メーカーが東レ製品を原材料にしていることはあり得えるかもしれない。

旧サイテック社製TX1100 炭素繊維をテープ状に加工したもの。制裁によるこの材料の入手不能がMC-21を製造停止に追い込んだ(出所:アエロコンポジット社)

 しかし、東レが主要材料を直接納入していることはない。ロシアのメディアの誤解であろう。

 これまで使っていた米国製素材が全く入手できなくなり、MC-21の主翼や尾翼は生産できない状況になった。

 すでに試験機が完成しているので、試験飛行は継続できなくはない。しかし、このまま開発をやり遂げ型式証明を取得しても、同じ設計で量産ができないため試験飛行や開発を進めても意味のない状況である。

結局開発やり直しか

 2019年1月に入り、入手できなくなった米国製の材料をロシア製の材料で置き換え、開発・生産を継続するというロシアの航空産業幹部の発言が報道されている。

 しかし、これは極めて困難である。

 炭素繊維複合材は、炭素繊維をエポキシ樹脂で固めて作る。炭素繊維とエポキシ樹脂の相性が合わないと製品にならない。

 炭素繊維、エポキシ樹脂、製造条件、設備のすり合わせが必要で、どこかを代えるとその炭素繊維複合材製部品の開発はほぼやり直しになる。この時点で、年単位の開発が追加で要求されることになる。