昨秋以降、世界同時不況が巻き起こり、日本経済も大混乱が続いている。こうした状況下、昨年以降、特に強烈な逆風が止まない業界がある。

 民間信用調査会社・東京商工リサーチによると、2008年通年の倒産件数(負債総額1000万円以上)は1万5646件に上った。このうち、4467件とダントツのトップとなった業種が「建設業」であり、逆風が今も吹き続けている業界に他ならない。

 官による規制強化、不動産市況の急激な冷え込みなど要因は様々だが、ある新基準の存在も業界の重しになったことはあまり知られていない。

逆風をさらに強めた「新・経審」

 「風速50メートルの逆風がずっと吹き続けている」・・・。業界動向を取材した際、大手ゼネコンの元役員が溜息をついた。OB氏の言う逆風とは、2007年の建築基準法改正に伴う建築確認申請の厳格化で、多数の工事が遅延・凍結となった悪影響を指す。このほか、公共工事の大幅削減傾向や不動産開発業者(デベロッパー)の相次ぐ破綻なども指している。

 ここまでは、各種メディアで概観が報じられており、多くの読者もご存知だろう。ただ、OB氏によれば、「もう1つ、業界全体を苦慮させた厄介な要因があった」と言うのだ。

 厄介な要因とは何か。主要メディアではほとんど報じられていなかったが、それは国土交通省が昨年4月から施行した「新・経営事項審査」に他ならない。

 「経営事項審査」、通称「経審」とは、国や都道府県の公共工事に入札する業者を審査する制度のことだ。国道や県道の工事を手がけるにあたり、業者の健全性を図るために用いられる。

 具体的には、建設業者の過去の工事実績、資金力などを項目ごとに指標化したものだ。公共性の高い工事を請け負う業者が工期途中で破綻するようなことがあれば、市民生活に重大な支障を来す恐れがある。そこで業者の経営状態を様々な角度から数値化し、選別を図るための内申表のようなものだと言えば分かりやすい。

 この経審が、国交相の諮問機関での審議を経たのち、1999年以来となる大幅な改正を施されたのだ。昨年4月から、業界内では「新・経審」と呼ばれている。

「利益」重視への転換で業界混乱

 なぜ、この新・経審が業界にとって厄介な存在となってしまったのか。ネタ元の建築関係者によれば、「業界のあり方を180度変えてしまう方針転換が盛り込まれた」からだという。