「日本は投資が乏しい国」は明らかな間違い

 スモールIPOの一方で、「日本の起業率はまだまだ低く、それに対する投資額もまた低い」というのが日本市場の特徴と言われる。しかし、これに対して鈴木氏は、明らかな間違いだという。

「50億円以上の投資を受けているベンチャー企業は多数あります。悪いことではないように思うかもしれませんが、例えばチャットボットの技術でイノベーションを実現しようとしているベンチャー企業は、有名なところだけでも10社以上はあります。当然、競争の末に選別が進み、いずれ1社か2社が勝ち残ることになるはずです。

 スタートアップ企業の数が一時的に増え、そこに投資が集まること自体は悪くなくても、結果として生き残るのが1〜2社しかないのであれば、結果はベンチャー企業が少なく投資金額も限られる現状とあまり変わりません。ならば、成功企業をどう増やしていくか。それこそが重要だと考えます」

 鈴木氏は、そのためにも日本では独自の概念として、「日本版ユニコーン」を増やす発想が健全だと指摘する。

「私が考える日本版ユニコーンというのは、未上場時の評価ではなく新規上場をした後に時価総額が1千億円を超えるスタートアップのことです。

 この5年間に上場した企業は400社ほどですが、初値時価総額から大幅に評価を高め、今では時価総額1千億円超という例はたくさんあります。

 投資家とともに成長する企業が増えれば、資本市場にも正の循環が生まれます。これまで社会の公器として、投資社会への脱皮を図ることができてこなかった日本の資本市場にとっても、正しいIPOは成長ドライバーとなるとの期待があります。

 このような企業が増えれば日本経済も回ります。ユニコーン企業を求めるより、日本が目指すべきは、むしろこうした成長企業を増やす取り組みだと思うのです」