多様な民族と国が溶け込むインドネシア・メダンの食

人々と文化の交流が生み出した独特の食文化

2019.01.11(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 麺のコーナーでは、中華麺とビーフンが置かれている。「一緒に食べるか」と聞かれたので「食べる」と答えると、1つの器に2種類の麺が入っていた。日本人ならこんな混ぜ方はしないだろう。

 とにかく、ホテル(つまり現地)の人に従って、おかずもスープもトッピングも混ぜて食べてみた。すると想像できなかったおいしさがあった。混ぜて食べるのはメダンに限ったことではないが、この複雑な味わいに驚いた。

 在メダン日本国総領事館で副領事を務める山森允夢さんによると、インドネシア人はもともと手で食べており、現在でも田舎に行くと手で食べている人に多く出会える。手では、混ぜないとうまく食べられないので、フォークやスプーンを使うようになっても、この「混ぜる」という習慣があるのではないかという。

先住民の食文化が料理に辛さをもたらす

メダンの市場で見られる食材の数々。

 メダン郊外に住むザラさんとリダさんに、メダンの市場に連れて行ってもらった。肉や魚に加え、見慣れない野菜や果物が雑然と並んでいる。「これは何か」と聞きまくる筆者に、2人は丁寧に説明してくれた。その説明では「これはバタックがよく使うスパイスだ、野菜だ」といったように「バタック」という言葉がよく出てきた。

「バタック」とは「バタック人」のことを指す。多くの島からなるインドネシアは、多様な民族から構成されている。バタック人は北スマトラの先住民で、イスラム教が大部分を占めるインドネシアでありながら、キリスト教を信仰している人が多い。豚肉を食べるし、独特のスパイスを使うことが知られる。

 メダンではバタック料理が頻繁に食べられており、「アルシック」というバタックの伝統的な料理もよく食べられていると教えてもらった。これは、スマトラ島の限られた地域でしか栽培されていない「アンダリマン」というスパイスを使った魚の料理だ。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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