平成になったとき、「上位」に入っていたのは日本、ブルネイ、香港、シンガポールだけだった。2017年にはそれに韓国とマカオが加わった。1989年の段階では、日本はダントツの1位であったが、2017年になるとマカオ、シンガポール、香港の後塵を拝するようになった。

 1989年の時点では日本人と香港、シンガポールなどに住む人だけが豊かであり、アジアの大半の人々は貧しかった。しかし、平成の30年間の間にアジアの国々は急速に発展し、その状況は一変してしまった。

消えつつあるアジアの「貧しい開発途上国」

 そして、もう1つ重要な点がある。アジアに日本とは比べものにならない格差社会が出現したことだ。これは、過去30年間、アジアを歩いてきた人間の実感である。

 多くの国で急速に富裕層が増え始めた。彼らの多くは企業経営者やその周辺に住む人々(中国では政治家も含まれる)であり、日本のサラリーマンのように給与をもらっているわけではない。それゆえに所得を把握することが難しい。そんなわけで信頼できるデータが公表されることがないから、日本であまり議論されることはないが、彼らは平均的な日本人よりもずっと豊かである。ベンツなどの高級車を当たり前のように乗り回している。

 アジアの人口は40億人だから、そんな富裕層が全人口の1%であったとしても、その総数は4000万人にもなる。