人間が生きていくためには1日3000kcal程度が必要になる。少し大胆な仮定になるが、穀物だけで必要熱量を摂取すると、1日1キログラムほど食べなければならない。1年間に365キログラムの穀物を摂取するには、70ドルから150ドルほどのお金が必要になる。

 平均所得は1人当たりGDPの約半分である。そう考えると、1人当たりGDPが200ドルの国では、食糧を十分に手に入れることは難しい。1989年の段階ではアジアでもベトナム、ラオス、ネパール、バングラデッシュなどがそのような状況にあった。

 このことから分かるように、1人当たりのGDPが1000ドル程度になれば、食糧の入手に困らなくなる。もちろん、それぞれの国に格差があるから、貧しい人はそれでも食糧の入手に困ることだろう。ただ、それは各国の国内問題と言ってよい。

 このことを理解した上で、図をもう一度見ていただきたい。2017年になると、1人当たりGDPが1000ドルを下回る国はネパールだけになった。そのネパールも835ドルだから、絶対的な貧困は脱したといってよい。飢えに苦しむ人が劇的に減った。これが、アジアにおいて平成の30年間に達成されたことである。それは、長いアジアの歴史において画期的な出来事と言えよう。

日本がダントツ1位だったのは一瞬だけ

 現在、中国とタイは「中上」に分類されている。インド、インドネシア、ベトナム、バングラデッシュは「中下」にいる。中国の成長速度は明らかに減速しており、今後、順調な成長が続くとは思えないが、それでも2017年のGDPが8827ドルである。おそらく近い将来、先進国の入り口とされる1万ドルを越えることになろう。

 また、インドやベトナムなど現在「中下」に所属する国々は、近年、年率7%程度で順調に発展しているから、そう遠くない将来に5000ドルのラインを突破することになる。中進国入りである。