技術系の日本企業の招致を行うマレーシア。日本側のメリットは?

 12月10日、マレーシアの政府機関「マレーシア・デジタルエコノミー公社(Malaysia Digital Economy Corporation、以下“MDEC”)」が日本の起業家や投資家の招致を強化する意向のプレスリリースを発表した。

 ビジネスにおいて、これまで何十年にもわたり良好な関係を築いてきた日本とマレーシア。MDECのCEOであるダトゥック・ヤスミン・マフード(Datuk Yasmin Mahmood)氏は、マレーシアが現在「ASEAN諸国におけるデジタル経済のハブとなる」ことを目標に掲げていることを表明し、そのために最も重要な貿易相手国である日本と共にビジョンを確立しながら、双方に利益がある関係を育てていきたい旨をコメントしている。

 10月31日に発表された世界銀行のビジネス環境ランキング2019年版で、マレーシアは15位につけた。約190ヵ国・地域の起業のしやすさなどを順位付けした同ランキングにおいて、日本は39位。高度なデジタル経済の発展を目指すマレーシアとの連携によって、広がる可能性もありそうだ。

 マレーシア政府が進めるデジタル化の動向や、日本企業が進出する余地や魅力について、MDECのVice President、ヒュー・ウィー・チューン(Hew Wee Choong)氏(以下、チューン氏)に詳しく話を聞いた。

デジタル経済の発展を目指して掲げる4つのゴール

 マレーシア政府のデジタル経済への関心の高さは今に始まったことではない。古くは1997年に掲げられた、同国の首都クアラルンプール市周辺に最先端の情報技術産業都市を建設する「マルチメディア・スーパーコリドー(Multimedia Super Corridor)」構想にまで遡る。

 そして現在、2017年時点でデジタル経済によるGDP寄与率は18%以上。政府目標である2020年での20%超は目前であることからも分かるように、マレーシアのデジタル経済は現在、同国の成長における基盤となっている。「GDP寄与率20%を達成するために、マレーシア政府は4つのゴールを設けています」とチューン氏は語る。以下、MDECが行っている施策と併せてご覧いただきたい。

1. マレーシアへの投資を促進
技術的な面で政府が力を入れているIoTやビッグデータ、AIやeコマース、クラウド、ブロックチェーンなどの領域において、日本を含めた世界中の企業に投資をしてもらう。テクノロジーの発展を目的とした投資はもちろん、東南アジアや中東に向けてサービスを提供する上での投資もサポートしている。
今日までに約3,000の企業がマレーシアに投資を行っており、それにより約10万の新規雇用が創出された。

2. 地元のスタートアップ起業家を支援
2017年は国内のデータセンターや地元のFinTech企業への投資を拡大。マレーシアで起業する技術系起業家をサポートしている。

3. イノベーションを生む文化を構築
マレーシア国内でイノベーションを生むためのプログラムを実施。特に同国の主要な産業である製造業において、IoTやビッグデータを積極的に活用している。
また、スタートアップのデジタル化においては「マレーシアデジタルハブ・イニシアチブ」 というプログラムを実施するなど、スタートアップ間の協業の促進や技術起業家が国内で拡大しやすい環境を整える取り組みを行っている。

4. Digital Inclusivity
貧困層もデジタル経済の恩恵を受けられるよう、政府として支援を行う。

 同国の通信・マルチメディア省傘下の政府機関であるMDECは、この4つのゴールを指針に、マレーシアのデジタル経済を促進・支援するための環境づくりを行っている。

「最近では、2017年に日本のNTTがスタートアップに向けたコンペを行いました。こちらのハッカソンには約200の企業が参加し、優勝企業には実際にNTTの本部でどのようなイノベーションが行われているかを見学する機会をご提供しました。MDECではこのような形で、スタートアップと大企業をつなげる取り組みも行っています」とチューン氏。

 NTTのほかにも日立や富士通、NECやトランスコスモス、バンダイナムコやオウケイウェイヴなど、多くの日本企業がマレーシアへの投資を行っている。日本企業がマレーシアでビジネスを行う魅力は、どこにあるのだろうか。