「米国も2022年に、ロシアとESAも共同で2023年に同様の南極域探査を行う予定で、どの国もゲートウェイの方では協力して仲良くやろうと言いながら、無人探査の方では火花を散らしているのです」

 このほか、2021年に南極域の無人探査を計画しているのが中国だ。2007年から「嫦娥(じょうが)計画」のもと、段階的な無人月面探査を行っている中国は、2018年12月には世界で初めて月の裏側に着陸すべく、「嫦娥4号」を打ち上げた。2030年以降、無人の研究拠点を月面につくる計画も発表しており、明らかに米国主導の「ゲートウェイ」を念頭に置いた牽制である。

「中国がいろいろな動きを見せる中、米国としては黙って見ているわけにいかない状況です。アポロ計画が米国とソ連の競争で推し進められたように、ゲートウェイにも政治的な側面があることは否定できません」

ゲートウェイは月表側の外周をぐるっと回る

 では、肝心の「ゲートウェイ」とは一体どのようなものなのか。

「NRHO」と呼ばれる軌道上に建設する(文科省「宇宙開発利用部会」第26回「ISS・国際宇宙探査小委員会」資料より)
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 月は地球から約38万キロ離れたところを自転しながら公転している。地球から見えるのはいつも「ウサギ」のいる表側で、裏側は見えない。「ゲートウェイ」は地球から常に姿を確認できるように、この表側の外周をぐるっと回る(右の図を参照)。

 ご覧の通り、軌道は楕円で、南側が長い。北極の上空4000キロメートルが最も高度の低いところで、ここから南に進むにつれて高度が上がり、南極の上空7万5000キロメートルでピークに達する。その後、徐々に高度を下げて北に向かい、約7日間で1周する。

「これが月を東西に回る軌道だと、ゲートウェイが裏側に入った時に見えなくなるばかりか、通信も途切れてしまいます。でも、この軌道であれば、常に見えますし、通信が途切れることもありません。さらに裏側の様子もゲートウェイを通して知ることができ、科学的に関心が高い南極域に至っては、ほぼ常時観測できる」

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