セデンタリー(座りすぎ)は実は喫煙に並ぶほど健康リスクがあり、がんや糖尿病、心疾患などの要因にもなると、今や海外でも大きな話題となっている。同社はセデンタリー対策として、大分の事業所やアメリカ社ではスタッフ部門の全社員分、その他のオフィスでも一部で、机の高さを調節できるスタンディングデスクを導入済みだ。

 ただし、スタンディングデスクはあくまで希望者のみへの支給。強制はしていない。だが、「大分やアメリカに行くと、立って働いている人が結構多い。強制していないのに、立っている人が多いということは、その方が楽なのでしょうね。もちろん座って考えたいときはそうすればいいんですが、データ上でも、立って働いている人たちのモチベーションは高いという特徴はあります」と浅野さん。

 本社には、社員が自由に心身の状態をこまめに把握できるようにと、体組成計、血圧計などのほか、疲労度を測定するための心電・脈波計や、メンタルの状態を把握できる脳波計まで設置された健康測定ルームがある。

脳波計では、ストレスがかかっているかどうか、緊張やリラックスの度合いなどメンタルの状態を把握できる

 そして、各階段の入り口には、「健康階段」の表示が。1フロア分階段を上がると1.6kcal、1フロア分階段をおりると1.3kcal消費するという情報を、上り下りの動作を示すイラストと合わせてセンスよく表現したサインなのだ。

 ポイントは、階段の消費カロリーの表示とセットで、自動販売機のドリンク類の摂取カロリーを表示していることだという。「階段の消費カロリーだけを見ても、ピンとこないかもしれない。ですが、ある炭酸飲料が1本160kcalだとわかったらどうでしょう。階段100階分を上がってようやくこのドリンクの摂取カロリーが消費できるとわかれば、頭の中で情報がつながり、日ごろの食生活にも変化が起きてくるのではと考えています」と浅野さんは話す。

バーチャルなウォーキングラリーで歩数を増やす

 フジクラでは、こうした設備面での工夫のほか、健康増進を目的とした様々な社内イベントにも取り組んでいる。中でも長く続いている人気イベントが、ウォーキングラリーだ。ごく普通に歩数を測ってもつまらない、実際には社内にいるけど国内外のバーチャルな観光地を歩ける仕組みにしたら? というアイデアで始まった。

 お遍路で有名な徳島や、フジクラグループの事業所があるエリアなどをモチーフに選び、見た目に楽しさのある地図に起こし、起点やゴールを設定。3カ月間測り続ける歩数によって、ゴールに向けて、現在はどこまで進んでいるのかがウェブ上で読み取れる。個人や職場のチーム、友達グループなどでも参加できる、年に2回の恒例人気イベントだ。

人気の社内イベント、ウォーキングラリーのバーチャル画面。お遍路で人気の四国八十八か所巡りがモチーフ

 このイベントを毎年続けた結果、社内でごく普通に仕事をしているだけなのに、その他の世代に比べ歩数不足が課題だった30代、40代の社員の歩数が、現在目標としている8000~8500歩水準にまで伸びたという(下のグラフ参照)。

社員の月次平均歩数(青い棒グラフ)が「適正レベル」になった
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