第一歩は、社員の健康データを一元管理

 同社の取り組みを具体的に見ていこう。まず取り掛かったのは、IT技術を活用して、社員一人ひとりの健康データを一元管理することだ。そのデータを分析し、部門や事業所、個人の健康課題を見つけ、それぞれの健康づくりを支援する健康増進プログラムにつなげようという作戦だった。

 とはいえ、メンバーに医療や健康の専門知識があるわけではない。当時は、健康経営に関するツールを提供してくれる事業者がいなかったため、社員の健康データを管理するシステムの開発も模索しつつ、自前で取り組まざるを得なかった。

 このためシステム開発に2年ほどの時間をかけ、ウェブ管理システムを完成させた2014年の元旦、「フジクラグループ健康経営宣言」を発表。「社員が活き活きと仕事をしている」企業グループを目指すことを、対外的にようやく発信するまでにこぎつけた。

小学校にあるはずの「うんてい」が会社に

 大きな方針としてこだわったのは、「社員みんなが自然に健康になれる環境づくり」だ。東京・木場にある本社にも、そのための仕掛けが随所に隠されている。例えば、「コラボレーションスペース」と名付けられた打ち合わせスペースには、カラフルでお洒落な「うんてい」が設置されている。小学校のときには誰もがぶら下がったことがあるだろう、あれだ。

打ち合わせスペースの一角にある「うんてい」。カラフルな鉄にぶら下がれば、ユニークなアイデアも生まれそうだ

「本社の社員は、座り仕事が多く、前かがみの姿勢が長いせいか、体の柔軟性に問題がありました。長時間前かがみでパソコンに向き合うと、誰でも無意識に伸びをしますが、机で伸びをしましょうといってもきっと、やらない。だから、立って、わざわざ体を伸ばせる『場』を作ろうと。うんていは、日本人にとって実にユニバーサルなデザイン。誰でもどうやって使うかが分かります。そこに行くことで、座りっぱなしも解消されて、ほかの人との会話も生まれているようです」と浅野さんは話す。

 まだある。この打ち合わせスペースには、テーブルの高さを変えて、時に立って打ち合わせができるスタンディングデスクや、体をアクティブに動かせるよう、壁面の高いところまで書き込める特殊なホワイトボードが設置されている。「視点が変われば会話も弾む。立つことで消費カロリーアップ。上級者の人はスクワット気味で・・・」といった、立って、動くことを自然に促す「スタンディング会議」に関するインフォメーションも。

打ち合わせスペースのモニターには、「スタンディング会議」の情報が。立つだけでも消費カロリーがアップするが、スクワット気味で打ち合わせをすれば消費カロリーが大幅にアップする