「アラブの春」が起きる可能性が出てきたサウジアラビア

経済危機のサウジを原油価格「40ドル割れ」が直撃か

2019.01.04(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55103
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 ノヴァク氏が「昨年12月の減産で合意したのは、米国が一部の国に対しイラン制裁の適用を一定期間猶予したことが主な要因だ」と語ったことから察するに、ロシアは予測不可能なトランプ政権への対応に辟易としており、「OPECとの間でカルテルまがいの組織を作ったら、トランプ政権からどんな難癖がついてくるかわからない」と危惧したのではないだろうか。

 ロシアとOPECとの協調路線の綻びが生じてしまったことで、今年1月からの協調減産の価格押し上げ効果はますます限定的なものになってしまったと言えよう。

大幅に積み上がりそうな世界の原油在庫

「OPECプラス」にとって悩みの種はトランプ政権ばかりではない。

 原油価格が50ドル割れしても米国のシェールオイル生産が鈍化しない(12月20日付OILPRICE)ことから、米国の原油生産量の増加分が今年末までに「OPECプラス」の減産分を穴埋めする見通しが出てきている(12月24日付ロイター)のだ。

 米エネルギー省によれば、今年初めにシェール層での生産が増加するほか、年後半には以前から開発が進んでいたメキシコ湾の海洋油田の生産が本格化するため、原油生産量が今年末までに118万バレル増加する見込みである。

 米エネルギー省の予測が正しければ、サウジアラビアの見通しとは異なり、今年の世界の原油在庫の大幅な積み上がりを防ぐことはできないだろう。

 この問題は今年に限ったことではない。国際エネルギー機関(IEA)は「米国の原油生産量は2025年にサウジアラビアとロシアの原油生産量の合計に匹敵する規模にまで拡大する」との予測を出している(12月22日付OILPRICE)ように、「OPECプラス」の取り組みは世界最大の原油生産国となった米国との協調なしではますます効果が薄れることになることは必至である。

実体経済に加え金融面からも価格に下押し圧力

 供給サイドに加え、需要サイドも不透明性が高い。

 国際エネルギー機関(IEA)は今年第2四半期にも需給がタイト化に向かうと予測しているが、その前提は原油需要の伸びが続くことが前提である。「OPECプラス」が今年から減産を開始しても、需要見通しが下方修正されるのでは、需給バランス予測は供給過剰の状態から抜け出すことができない。

 世界の自動車業界はリーマンショック以降で初めての継続的な生産減に向かっており(12月20日付ブルームバーグ)、今年は世界経済が貿易戦争の痛みを感じる年になりそうだ(12月26日付ブルームバーグ)。

 米国の足下の原油需要は引き続き堅調だが、昨年12月の米国の自動車販売も6カ月連続で前年比割れとなりそうだ(12月22日付ロイター)。今年の米国経済は金融市場の変調から景気後退の瀬戸際にまで追い込まれる可能性がある。

 世界経済の成長センターであるアジアでも、流動性の引き締まりや貿易戦争などの影響でデフォルトが増加すると予想する声が高まっている(12月27日付ブルームバーグ)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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