「被告(Z社)は、元従業員Aが確定拠出年金(日本版401K)運用で、投資教育が不足したため被った損害2000万円を賠償せよ」

 2020年X月Y日、大手企業(Z)の経営陣は訴訟の結果に愕然としている。

 「確定拠出は、企業にとって運用リスクを従業員に転嫁できるものではなかったのか?」「国際会計制度(IFRS)から逃げるために日本版401Kを採用したのではないのか?」と財務担当の役員は激怒している。

 今後、同様の訴訟が続けば、企業は数千億円の損害を埋めないといけなくなる・・・。

 これは、フィクションであるが、十分にあり得るシナリオでもある。

国際会計制度からの足かせ

 2010年度から日本企業も任意で国際財務報告基準(IFRS=International Financial Reporting Standards)を適用できることになり、さらに2012年には上場企業に強制適用させるか否かが決定されることになる。

 一番厳しいシナリオの場合、2015年に上場企業の連結決算ではIFRSを適用される。

 この場合、もし株式や債券市場が下落して年金基金の運用が悪化し損失が出れば、少なくともバランスシート上の負債には計上しなければならなくなる。

 また、今後の会計制度の議論によるものの、企業の保有株式や年金のような売却可能な金融資産は、その価値の変動による損益を当期利益に反映しなければならなくなる可能性もある。

 こうしたことを背景に、日本企業が確定給付型の企業年金を維持できなくなるリスクがあることは、日本の年金担当者であればよく知られている事実である。