ご注文は? 肝臓は臨機応変な“エンジニア”

考究:食と身体(9)鍛冶の神ヴァルカン篇 

2018.12.28(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要

糖質不足を補うエネルギー源を合成

 また、何日も糖質が供給されない状態が続くと、アミノ酸による糖新生の他に、補助的なエネルギー源としてケトン体が肝臓で合成されるようになる。これは、脂肪酸の分解産物から生じる化合物で、ブドウ糖に次いで汎用性の高いエネルギー源である。

 ただし、皮肉なことに肝臓自体(と赤血球)はケトン体をエネルギー源として利用できない。これはヴァルカンが「どんな剣も通さない楯」と「どんな楯をも貫く剣」を同時に作れないような話であろう。

リクエストに合わせて臨機応変にものを作る

 これら多様な肝臓の働きは、食欲中枢や消化器系と同じくホルモンや自律神経系によって制御されている。たとえば、グリコーゲンや中性脂肪の合成促進により血糖値を下げる作用を持つのは、インスリンというホルモンである。逆に副腎皮質ホルモンやグルカゴンなどは、糖新生やグリコーゲン分解を促進させて血糖値を上昇させる。どちらの方向にも自律神経系が密接に関与している。

 すなわち、ヴァルカンが製作する武器や「深夜食堂」のマスターが作る料理は、神々や客たちのリクエストや状況(ホルモンや自律神経系)に合わせて臨機応変に変わってゆくというわけだ。

 さて、肝臓にやってくるのは栄養分だけではない。他所では処置に困る化合物もやってくる。あるいは肝臓内で発生する廃棄物的な化合物もある。次回はそうした「はぐれモノ」の行方について考えてみよう。

(第10回へ続く)

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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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