ご注文は? 肝臓は臨機応変な“エンジニア”

考究:食と身体(9)鍛冶の神ヴァルカン篇 

2018.12.28(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要

さまざまなアミノ酸を合成してタンパク質に

 さまざまなアミノ酸を合成するのも肝臓の重要な役割である。身体を構成するタンパク質はアミノ酸でできているのだが、どんなアミノ酸でもよいというわけではない。ヒトのタンパク質の材料となるアミノ酸は約20種類あり、タンパク質ごとに必要なアミノ酸の種類と数が決まっているのだ。

 ヒトは、必須アミノ酸とよばれる最低9種類のアミノ酸があれば、それらを用いて20種類のアミノ酸を合成することができ、これらを材料に多様なタンパク質を作ることが可能となる。特に、血液中の血漿タンパク質(アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンなど)のほとんどが合成されている場所は肝臓である。そのため、血漿タンパク質の血中濃度が低いと、肝機能の障害が疑われる。

 タンパク質はそれぞれに個別の機能があることを考えると、肝臓でのアミノ酸代謝は、まさにさまざまな部品を組み合わせて使用目的に合わせた武器をヴァルカンが製作しているかのようである。

代謝により脂質の濃度を調整

 脂質の代謝においても、肝臓はなくてはならない存在だ。肝臓で合成された中性脂肪やコレステロールは、VLDL(超低密度リポタンパク質)という脂質輸送体の形で血中に放出され、体内の細胞へ供給される。コレステロールというと健康に悪いイメージがまだ根強いが、細胞に必要であるから血中にあるのであって、血糖値と同じように適切な血中濃度が維持されている必要がある。よって、血中のコレステロール濃度が低下すれば、肝臓でコレステロールが新たに合成される。

 そして、余ったコレステロールなどはHDL(高密度リポタンパク質)という形で肝臓へ回収される。さらには肝臓内のコレステロールの一部は、第5回「婚姻の神ジュノー篇」で登場した胆汁酸へ変換されて消化管へ分泌され、脂質の消化を助ける。

 結局、血中の脂質の濃度も肝臓が総元締めとして調整しているのである。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。