金属の棒を土に刺したときの波形データは、一見雑然としているが、土の固さ、水分、抱える空気の量などのデータが含まれている。精確に測定したデータと、棒の振動という「雑なデータ」の両方を人工知能ににらめっこさせれば、おそらく人工知能は以後、棒を土に刺すという雑なデータだけで、土壌中の固体、液体、気体の量を推計してくれるのではないか。

 人工知能に学ばせるべきデータ。それは、必要なデータも含む、雑多とした「ノイズだらけのデータ」ではなかろうか。もちろん、「雑多なデータ」と同時に、「精確なデータ」を入力してやる必要がある。しかしその作業さえ済ませれば、金属の棒を刺す、燃やしてみる、といった、雑なデータからさまざまな推計値を示してくれるようになるのではないだろうか。

 人工知能の研究者は、農業現場で使えるセンサーがろくにないことを、あまりご存知ではないようだ。他方、農業研究者は、人工知能にいかなる学習をさせたらよいものか、よく分からない。おそらく私もその一人でしかないが、素人ながら人工知能の強みを推察するに、「雑なデータ」と「精確なデータ」の両方を与えることが、非常に重要なことではないかと考えている。

 これは着想でしかない。私は自分の研究テーマもあるので、これを実行するための人的資源も資金も時間もない。果たして、この記事で紹介した、棒で突き刺すとか土を燃やしてみるといった手法が、適切な方法なのかどうかも定かではない。おそらく、「雑なデータ」といっても、どの方法がより適切か、やり方を選定するまでに、相当の検討が必要だろう。

 だから、私の着想をあまりまともに受け取る必要はない。だが、おそらくは人工知能の研究者も、農業というプリミティブに見える産業に立ち向かったとき、プリミティブであるがゆえに、精確な分析データを取得することが非常に難しいという、専門外の人たちにはろくに知られていない意外な事実に面食らうことだろう。そのいささかのヒントにでもなれば幸いだ。