さらに深刻なのは、仕事の最前線で余裕がないくらい忙しく過ごしていると、目の前の問題に対処することだけに没頭するような、近視眼的な思考がクセになってしまうことです。これでは、プライベートの充実を考えるどころか、自分自身のキャリアやスキルアップについて考える余裕もありません。「今を何とか過ごす」ことしか考えられない余裕のない状態がずっと続くと、脳がそれ以外のことを考えられなくなってしまいます。実は中高年のビジネスパーソンの中には、こうした状態に陥っている人が少なくないのです。

 もちろん「心身をリラックスさせることは大切だ」と分かっていても、じゃあどうするかと言ったら、「睡眠時間を増やす」とか「ジムに行って汗を流す」といった程度の発想しか出てこない思考習慣が身についてしまっている。だから休みが中途半端に増えても、どう使っていいかわからなくなっているのです。

 これは、心のゴムが伸び切ってしまって弾力がなくなった状態と言えます。この状態で、中途半端に休みがあれば、逆に無力感に襲われてしまうリスクもあります。

 中高年はこれまで長時間労働も厭わず働いてきた歴史もあります。趣味や飲みも会社のメンバーばかり。そこに疑問を持たなくいいまま、いい歳になってしまった人が多いのです。

 このように「職場で仕事をしているときが一番充実している」というタイプの人が、「働き方改革」によって自宅でのんびりする時間を与えられようものなら、急に家事を頼まれたり、自分の居場所を見つけられなかったりして、逆に疲れてしまうもの。この問題、「働き方改革」の議論の中で見過ごされがちではありますが、実は非常に深刻な問題なのです。

伸びきった心のゴムを復活させよう

 パンツのゴムは伸びきったら取り替えるしか手はありませんが、心のゴムは伸び切っても復活させることは可能です。

 心のゴムを復活させるオススメの方法は次の2つです。

①瞑想やヨガなどを行い精神的な充実・マインドフルネスを手に入れる
②PDCAではなく、解決志向のアプローチを取る

 この2つを行えば、仕事という魔物に食い尽くされてしまった人の心を取り戻すことが可能になります。早速解説しましょう。

瞑想やヨガで、精神的充実を取り戻す

 Google、ゴールドマンサックス、Apple、Yahooをはじめストレスフルでハードワークな企業がこぞって導入しているのが「マインドフルネス」です。メディアで取り上げられる機会も増えているので、「マインドフルネス」という単語を聞いた覚えがある人も多いのではないでしょうか。

 マインドフルネスとは、「意図的に“今”の瞬間に意識を向け、判断や解釈をしない心の状態」を指します。簡単に言うと、マインドフルネスは雑念や無駄な思考を取り払い、今の目の前のことに向き合っている状態にすることです。

 普段、仕事をしている時も目の前の業務に「完全に」集中している時間は意外と少なく、実は雑念や無駄な思考に邪魔をされることが多いのです。資料を作っていても、「今日のランチは何を食べようか?」や「そういえば、あのお客さんのあの案件そろそろ返事かな?」などといった別のことが無意識的に頭に浮かぶもの。そして、これが起きると業務の効率が落ちますし、ストレスになってしまいます。