中国の国民監視システムが全世界に

 また、ブルーメンソール氏によると、ファーウェイは単にイラン制裁違反にとどまらず、米国や国際社会全体にとって非常に深刻な脅威を提起しているという。ブルーメンソール氏は次のように説明する。

・中国政府は自国民に対して、「社会信用体系」というシステムの下に各個人の政治傾向、経済生活、消費傾向などを調べ、共産党への忠誠度を測定している。その情報取得に技術面でファーウェイが大きく貢献してきた。このシステムは全国民を共産党独裁に従属させる警察国家的制度に等しい。

・ファーウェイは5G(第5世代移動通信システム)やAI(人工知能)の開発に関して世界の中で先頭に立っている。この競争に勝てば、世界各国でのスマホに基づく情報を独占的に取得することも可能になる。その結果、ファーウェイは世界各国で中国の警察国家的な国民管理ができる立場となる。

・ファーウェイは習近平氏が進めるハイテク警察国家の構想に、長年にわたって協力を続けてきた。今後、中国共産党政権はファーウェイを通じて他の諸国の国民の個人情報を取得し、それぞれの国家に中国流の国民監視システムを構築させられる立場となる。

 ブルーメンソール氏は、ファーウェイが習近平氏の構想に従ってジョージ・オーウェルの「1984年」的なハイテク警察国家の創設に寄与してきた実態を指摘する。そして、このままだと、中国が全世界を監視する警察国家になることを後押ししていくことになると警告するのだ。

 いまの孟晩舟容疑者の身柄をめぐる米国、中国、カナダの駆け引きの背景を知るには、きわめて有益な米側の解説だといえよう。