現在は、舵面を動かして操縦しているが、これは抵抗を生む。モーターにつないだファンの回転数を操作して操縦できれば、抵抗を生むことなく操縦できる。

 胴体の表面には空気との摩擦により、境界層という抵抗を増やす空気のよどんだ流れができる。この境界層を吸い取ることで、抵抗を減らすことができる。

 胴体後部に胴体表面の空気の流れを吸い取るようにファンを配置することで、実現できる。このようなファンの配置は、ターボファンエンジンでは難しい。

図4 ハイブリッド機のコンセプト図(出所:NASA ウエブサイト) 主翼の先端も含め、小型のファンが多数配置されている。ファンの配置に制限がないため、よりよい効果を生む場所にファンを配置することができる。後部のファンは胴体と空気の摩擦によって発生する抵抗を減らす効果がある。

 これら、電動化することで可能になる効率化を盛り込むことで、モーターと配線分の重量増による燃費悪化を超える効率向上が目指せるかもしれない。これが、ハイブリッド機のコンセプトである。

ハイブリッド旅客機を実現できるか

 残念ながら、現状のモーターや配線は重すぎる。述べてきたようなメリットを実現できたとしても、燃費向上どころか重量増による燃費悪化を招くだけである。

 ハイブリッド旅客機の実現には、モーター、配線、パワーエレクトロニクス機器が、同じ出力を保ちつつ現在の3分の1程度の重量にならなければならない。実現にはしばらくかかりそうだ。

 配線は超伝導ケーブルが必要ではとの声もあるが、現状、超伝導ケーブルは液体窒素へのどぶ漬けが必要である。そんなものが飛行機に搭載できるのか。また、軽量になるか疑問である。

 理論上で考えられている電動化によって成し遂げられる飛行の効率化も、実際に理論どおりに実現可能かを確かめていかなければならない。