ウェブだけでなく、紙媒体にも進出したNewsPicks

 若い世代を中心に支持されているソーシャル経済メディア「NewsPicks」。メディアアーティスト・落合陽一氏を大胆に起用するなどして、ますます若者の心に刺さりまくっているこのメディアを、「脅威」と捉える既存メディアもある。NewsPicksが思い描くこれからのメディア空間とは果たしてどんなものなのか。フジテレビ解説委員の鈴木款氏が、NewsPicks編集長の金泉俊輔氏を直撃した。(構成:阿部 崇、人物撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)

鈴木款氏(以下、鈴木) 今日はいま最も注目を浴びているソーシャル経済メディア「NewsPicks」の戦略を、編集長の金泉さんから直々にうかがいたくてやってきました。

鈴木款:フジテレビ解説委員。早稲田大学卒業後、農林中央金庫にて外為ディーラーなど歴任。1992年フジテレビ入社。営業局、『報道2001』ディレクター、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。著書に『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』(扶桑社新書)、『フジテレビ元経済部長が毎日実践している 日経電子版の読みかた』(プレジデント社)など。現在、FNN.jpプライムオンラインに教育問題など寄稿中。

 実は私は『日経電子版の読みかた』という本を書いたんです。これは日経新聞社とのタイアップではなく、「フジテレビの人間が日経電子版の利用術を書いたら面白いんじゃないか」とプレジデント社の編集者と相談して作った本なのですが、丸の内のビジネスマンにとって、経済メディアのプライオリティNo.1はいまや日経電子版と言っていいと思うんです。ところが、その日経の牙城にいま、六本木や渋谷のスタートアップ系の人たちを中心に支持を集めてきたNewsPicksが挑んでいるというのが、新しい経済メディアの攻防の構図なのかなと私は理解しているのですが、この見方は金泉さんの実感と合っていますか。

金泉俊輔氏(以下、金泉) そうですね、ここ数年、丸の内や霞が関など、伝統的な企業でスーツを着てウインドウズを使うビジネスマンや官僚たちの文化を東京の「東海岸文化」、渋谷や六本木のジーンズにMacを使うスタートアップ系の文化を「西海岸文化」と呼ぶ分類のされ方があります。その中でNewsPicksは西側の人たちに支持されてきた経緯がありますが、あまり西と東を分けずにやっていこうと思っています。

 というのも東側のこともやっていきたいし、実際に東側の経済圏にもいま西側的な文脈が求められるようになってきたと思うんです。例えば、現在進んでいる、丸の内の再開発にもNewsPicks的な世界観が入ってきている。逆に言えば、私たちも視野を広げて、そういう経済圏でも通用するコンテンツを作っていかなきゃいけないかなと。

「経済情報で、世界を変える」

鈴木 NewsPicksといえば、読者層はやはり若者中心のイメージです。実際のところはどうなんでしょう? 他にも男女比や居住地はどういう感じなんですか。

金泉 現状は首都圏中心で、年齢層は30代を中心に20代から40代というところです。男女比はやはり男性のほうが多いですね。今後は、女性読者や地方での認知度も上げていくために、地方でのイベント開催や多様な読者層を考えたコンテンツ作りなど、色々と取り組んでいるところです。

鈴木 先ほど「NewsPicks的な世界観」というワードが出ましたが、その世界観についてもう少し具体的に説明してもらえませんか。

金泉 まず1つは、NewsPicksを含むユーザベースグループ全体のミッションとしてある「経済情報で、世界を変える」というものです。

金泉俊輔:NewsPicks編集長。大学在学中から雜誌ライターとして活動、立教大学卒業後、扶桑社に入社。『週刊SPA!』編集長、ウェブ版『日刊SPA!』創刊編集長などを務める。2018年3月、株式会社ニューズピックスへ。

 今後さらにテクノロジーの進化によってボーダーレス化が加速するなかで、国内産業の動向も重要ですけど、「世界はどうなっているか」という情報を相対的に多く見せていくことで、日本に住んでいる人たちに、国内だけに閉じこもらないものの見方、発想を身に着けていくことが重要だと考えており、NewsPicksでは世界最先端を、早く、鋭く、わかりやすく届けていきたいという思いもあります。

 またNewsPicksは昨年から、米国版もローンチしています。これも「経済情報で、世界を変える」一環と言えます。