海中に沈み込んでいくレール

レールの間にはコンクリートの台座のようなものがある

「線路? いや、こんなところに列車が通るわけもないし、第一、先が海中に沈んでる」そんなことを思いながら、レールのある方向に歩いていった。

 波打ち際はコンクリートで舗装されており、海に向かってゆるやかな傾斜を描いた斜路になっている。赤錆びてかなり年月が経っていると思われる鉄のレールの下には、枕木代わりのブロックが敷かれていた。

 海中に沈むレールの先がどうなっているか、海に近づいてみる。「滑りますから気を付けてください」と、付いてきてくれたタクシーの運転手さんから声がかかる中、慎重に海の中を覗き込む。海中のレールは1mほどで見えなくなり、その先がどうなっているかはわからない。

 あちこちに見られる何かを燃やしたような灰色のすすけた跡は、比較的最近のものに思われるが、このレール自体は最近作られたものではないだろう。以前この入り江は漁港として使われていたので、小型船舶を進水させるためのスリップウェイという斜路のように思えるが、その時のものと考えるには、何か違和感が残る。

波打ち際のレールには、フジツボのような貝がびっしり張り付いていた

太平洋戦争時の秘密基地だった

 調べてみると、この鮫ヶ浦には太平洋戦争時、震洋(しんよう)という特攻艇の秘密基地があったことがわかった。