歯ごたえに口触り、進化する食べやすさの測定方法

教科書が通用しない「テクスチャー測定」に挑む

2018.12.07(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

プルプルの仕組みは網目構造の水分閉じ込め

 寒天の食感は、「ゲル」と呼ばれる固化状態によって生じる。寒天は温めると水に溶け、冷えると固まる。固まるのは、寒天の粘質成分の分子が集まり、くっついて、三次元の網目構造を作るからである。液体のときは、食品中の水分は自由に動き回ることができるが、固まった寒天の中では、水分は網目構造に閉じ込められて流動性を失う。そのため、プルプルの状態になる。

 このような水を含む粒子が網目構造になって流動性を失った状態が「ゲル」であり、ゼリーや豆腐、プリン、こんにゃくなどもその例だ。網目を作る成分(ゲル化剤)は、寒天やこんにゃくでは多糖類、ゼリーや豆腐などではタンパク質である。

 寒天と同じようなゲル状の食品でも、ゼリーは寒天よりやわらかく弾力があり、プルプル感が増す。一方、グミはもっと硬く、弾力がある。いまはやっているタピオカミルクティーのタピオカは、弾力はあるが、モチモチとした食感だ。このようなさまざまな食感は、ゲル化剤やゲル化の条件により網目の構造が変化して生まれる。

高校物理では必ずしも当てはまらない食品の物性

 こうした食感には、食品のいろいろな物理学的特性、つまり「物性」が関わっている。寒天の舌触りは、口に入れたとき寒天がどのように変形するのか、流動するのかという物理現象がもたらす。また、歯ごたえは口の中で噛んだときに歯で感じる硬さによって決まる。こうしたことから、食品のかたさや弾性、粘性などの力学的特性を測定することによる、食品の物性解明が進んでいる。

 ところが、弾性を示すフックの法則や粘性を示すニュートンの法則などの高校物理で教わる事柄は、食品に必ずしも当てはまらない。このような法則は、化学的に純粋な物質に適用されるもの。これに対して、食品は非常に多くの成分からなる。しかもその成分の分散は均一ではなく、状態も安定していない。そのため、純粋な物質では見られない特異的な現象が見られることがある。

「粘性」は液体が流れるときの流れやすさ・流れにくさを示すものである。たとえば、蜂蜜は水より粘性があるため、流動しにくく、流れ出してもゆっくり流れていく。このように粘性が増せば、流れる速度は遅くなるはずだが、食品ではマヨネーズやトマトケチャップなど、そうはならない液体がたくさんある。

 粘性の複雑さを示す現象として、他に「ダイラタンシー」がある。これは、水溶き片栗粉で見られる現象で、片栗粉のデンプン粒子が液体を吸い込み、かたくなる。テレビ番組などでもよく取り上げられているので、聞いたことのある人もいるかもしれない。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。