大企業のオープンイノベーションは脱・自前主義から

スタートアップとの協業を加速させるキーとは?

坂井田 大悟/2018.12.18

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 前回(「大企業とスタートアップの協業のすすめ」)では、欧米に比べて日本では新興企業の成長が限定的であり、また、オープンイノベーション版の自前主義およびスタートアップなどの連携先との協調に難がある旨を述べました。今回はその続編として、それぞれの阻害要因を深耕するほか、その対応策についてもご紹介します。

自前主義から脱却する

 情報通信白書には次のような記載があります。

「我が国の産業の特徴として、国内で激しい市場競争を繰り広げている点がある。(中略)数多くの社が競争力の確保をめざし、網羅性の高い技術を保持し(中略)他社技術の導入については、パーツや部材として完成している技術については製品開発に当たり多種多様なものが利用されているが、技術を持つベンチャー企業や中小企業のM&Aや、大学や他社からの技術そのものの購入など、第三者が開発した技術を自らのものとする動きや、グローバルな共同研究開発への取組が弱い1

 オープンイノベーションを妨げる自前主義 (英語:Not Invented Here Syndrome)とは、「過去の成功体験から自社偏重な思考や状態の理解をして、製品・サービスとそれを支える技術は自社でつくるべきで、自社がつくっていない他社の技術は活用しない」という精神文化を指します。

 これはオープンイノベーションを阻害する要因として考えられています。つまり、自社に取り込める既成技術があるにも関わらず、自社内で必要な技術開発を行うので、製品やサービスの上市スピードが遅くなってしまうのです。日本企業には自前主義が蔓延しているといわれており、経済産業省の調査では、おおよそ半数の企業が「社外の技術と社内の技術を平等に比較することなく、社内の技術を使う」と回答しています2

 このような自前主義から脱却するには、企業の経営層が他社と連携するメリットを理解し、管掌する役員を設けることや、ミドルマネジメントに対してオープンイノベーションを奨励することが有用です3

 また、現場においても、客観的に顧客を観察して得た洞察を元に、製品やサービスを形にしていくデザイン思考のアプローチが有用です。デザイン思考のプロセスを取り入れることで、顧客の定義・調査・観察を通じて、顧客とその行動における不安・不満・不便などの顧客の「不」に焦点をあてることができます。その上で、これらを取り除くあるいは緩和するためのアイデアを出し、アイデアを検証するために必要な最小限の機能を実装、テストして顧客への有用性を確認します。

総務省(2013), 第3節ICTによるイノベーションを推進する研究開発 (4)自前主義への拘り, P307
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/pdf/n3300000.pdf

2 経済産業省(2016),オープンイノベーションに係る企業の意思決定プロセスと課題認識について、P27
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/sangyougijutsu/kenkyu_kaihatsu_innovation/pdf/003_04_00.pdf

3 経済産業省(2015),民間企業のイノベーションを巡る現状、P29, P31
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/sangyougijutsu/kenkyu_kaihatsu_innovation/pdf/001_s01_00.pdf