31人には、各人に2人のベテラン兵器開発者がメンターとしてサポートする。1人は大学から他の1人は国防産業から派遣される。

 若者たちは、当初の短期コースを修了すると、専門分野を選択し、関連する国防研究所に配置され、様々な経験をしスキルを上げていく。

 4年間のコースを経て、博士課程に進み、中国のAI兵器プログラムのリーダーとなる。

 中国においても日本と同様に、優秀なAI人材の不足が問題となっているが、高校生をAI兵器の開発に利用しようという試みは世界的に例がなく、中国人民解放軍のAI開発重視を象徴している。AI研究者の低年齢化は今後とも進むと思われる。

●BITプログラムに対する批判

 BITプログラムには当然ながら批判がある。国連大学政策研究センターの研究者(Eleonore Pauwels)は、次のように警告している。

 「この中国のプログラムは、次世代の若者にAIの軍事利用に関する研究を奨励する世界で初めての試みだ」

 「BITの試みは、AIの兵器化に焦点を絞った強烈な試みであり、多くの問題点を内包している」

 「AIの知識が、その他の技術例えばバイオ技術、量子コンピューティング、ナノ・テクノロジー、ロボット工学などと結びつくと、安全保障や軍事的支配の観点で劇的な意味を持つ」

●AI兵器に関する中国の本音と建て前

 中国の発想と行動の特徴は、民主主義諸国が重視する倫理とか国際法の順守などに縛られることなく、自らの国益を追求していく点にある。

 AIの軍事利用についても、倫理や国際的な取り決めには制約を受けないで、BITプログラムに対する批判にもかかわらず、これを推進するであろう。