アジアを代表する世界的IR企業、ゲンティングループが展開するマレーシアのゲンティンハイランド。再開発の目玉事業、米映画制作会社20世紀フォックスの世界初テーマパーク「20世紀フォックス・ワールド・ゲンティン」が2019年開業する予定だった(マレーシア・パハン州、筆者撮影)

 2010年に開業したシンガポールの「リゾート・ワールド・セントーサ」の開発でも知られ、カジノを解禁する日本への参入を長年、切望してきた。

 大阪府の松井一郎知事はゲンティングループが経営するシンガポールとマレーシアのIR事情を何度も視察している。

 「アジアの統合型リゾート(IR)を肌で感じ、多くを学びたい」と視察の目的を語っていた。

 アジアや米ラスベガスを中心に、今でこそ世界的に注目されるIRだが、それを半世紀前にマレーシアのジャングルで発案、建設したのが、 現在の同グループの創業者で現会長のリム・コックタイ(林国泰)会長の父、故・林悟桐(リム・ゴー・トン)氏。

 標高約2000メートルの高地に広がるジャングルを開拓し、今では「マレーシアのラスベガス」とも称される高原リゾート「ゲンティン・ハイランド(中国語:雲頂高原)」(雲の上のカジノ)を作り、大成功させた。

 アジアのビジネス界では、知る人ぞ知る起業家の神様である。世界に日本の即席ラーメンを普及させた日清食品の創業者、安藤百福氏のような存在と言えば日本人には分かりやすいだろうか。

 彼の次男が現会長のリム・コックタイ氏。今回の20世紀フォックスとの世界初テーマパーク誘致について、「映画テーマパークで、ゲンティンハイランドを世界の主要観光地に育てたい」と意欲的だった。

 その野望も、ゲンティンの雲の上に、シャボン玉のように泡となって消え失せてしまったわけだ。

 ゲンティンは声明で、「今回の事業中止や訴訟が同社の経営や営業に悪影響は起こさないだろう」とするが、当然、企業の今後のグローバル戦略の舵取りへの影響は避けられない。

 それにしても、なぜ突然、20世紀フォックス初のテーマパークがご破算になったのか。ディズニーによる21世紀フォックスの買収が背景にあるにせよ、筆者には何か腑に落ちない。