アメリカを目指す中米移民集団。米国境で地元住民と衝突(写真:ロイター/アフロ)

                       (国際政治学者・舛添要一)

 外国人労働者の導入拡大を目的とする入管法改正案は、11月27日に衆議院を通過し、現在は参議院において審議中である。この法案の問題点については、国会でも細かい議論が行われているが、政府は今国会中に成立させる方針である。

 政府が法律の改正を急ぐのは、深刻な人手不足に悩む経済界からの要請に応えるためであり、目先のニーズに対する緊急対応以外の何ものでもない。しかし、外国人労働者の受け入れは「この国のかたち」そのものに直結する課題であり、長期的視点を欠いた政策は、将来に禍根を残す。

「非自由主義的民主主義」唱えるオルバン首相

 私は、若い頃、ヨーロッパの国々で研究生活を送ったが、単純労働に携わる外国人労働者、移民の悲惨な実態を見てきた。また、移民が社会に大きな亀裂を生み、様々な問題を発生させ、大きな社会的コストとなっているのことも認識させられた。

 そして、今日では、アメリカやヨーロッパなどで移民・難民問題が政治の中心を占め、移民排斥をうたう極右のポピュリスト政党が権力を掌握しつつある。トランプ大統領のアメリカ、モラウィエツキ首相のポーランド、オルバン首相のハンガリー、バビシュ首相のチェコ、コンテ首相のイタリアのなどである。

 オルバン首相は「非自由主義的民主主義(illiberal democracy)」を唱え、選挙で自分を選らんだ有権者の意志を実行に移すためには「自由」である必要なないと豪語している。反移民の国民感情は自由な民主主義を抑圧する危険なポピュリズムに繋がっている。それは、ユダヤ人を虐殺したナチスの思想に通じるものであり、移民問題が民主主義の「墓堀人」となりつつある。