【2】ゴーン元会長の「密約」か

 今回の逮捕容疑になった5年間で50億円の過少記載は「会長退任後の顧問報酬の積み立て」とされている。だが、これは会長の一存でできることではない。少なくとも一部の(司法取引に応じた)役員は、この事実を知っていたと思われる。

 それを示す「覚書」があるなら、検察に通報する前にゴーン元会長に問い合わせ、彼が違法性を認めたら自発的な退任をうながし、それを拒否したら捜査当局に通報する、というのが常識的な順序だろう。

 ところが今回はそういう手続きを飛び越し、いきなり逮捕してから記者会見、取締役会という順序だった。ゴーン元会長は社内調査が進められていることも知らなかったようで、羽田空港に着いた専用機内で逮捕状を見せられたとき、逮捕までに数時間、質問したという。

 確かにこの手続きは異例だが、経営陣がこの事実を隠蔽したら、全員が刑事責任を問われる可能性もある。これほど大規模な経理操作をやるには、社内に多くの協力者が必要で、どこかから情報が検察にもれたのかもしれない。

 役員報酬の総額は株主総会で毎年29億9000万円と決まっていたが、有報に記載された(ゴーン会長を含む)全役員報酬の合計は16億5000万円。残り13億円以上が行方不明になっていることに、誰も気づかなかったのだろうか。

 この点で西川社長の記者会見と、ゴーン側の言い分は食い違っている。社長は「内部通報で初めて知った」と述べたが、ケリー元取締役は「2011年に有報に記載するとき社内で了解され、金融庁からも記載する必要はないと回答があった」と主張している。

 どっちの言い分も正しいとすると、過少記載はゴーン側と当時の有力な代表取締役が「密約」をかわしたと考えるしかない(2011年3月に役員報酬を有報に記載したとき、西川氏は代表権のない取締役だった)。差額の「顧問報酬」を退職給与引当金のような将来の債務として海外子会社などに分散して処理したら、取締役にも分からないという。

日産ゴーン前会長、容疑を否認 ルノーも内部監査を開始

仏北東部モブージュにあるルノー工場を訪れたブリュノ・ルメール経済・財務相(中央)と、迎えたルノーのカルロス・ゴーンCEO(右、当時)、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO、左、2018年11月8日撮影)。(c)Etienne LAURENT / POOL / AFP〔AFPBB News