多チャンネル化する就活の早期化と長期化

 そうした意味での就活の「多チャンネル化」の結果、起きてくるのは、就職活動の「早期化」だけではない。

 学生は、どこかの企業から内々定を得た後も、それ以外に本命の企業があれば就活を継続するし、同時に、内々定先の企業とのお付き合いも続くという、就職活動の「長期化」に拍車がかかることになる。学生生活のかなりの期間が、いや大学3年より前に事実上の採用活動が前倒しされれば、学生生活の実に半分以上の期間が、就活のために費やされる可能性が出てくるのである。

 もちろん、企業側から考えると、1人の学生を獲得するためのコストは、早期化が進めば進むほど増大する。その限りで、低学年次への採用活動の「超・早期化」が、すべての企業で雪崩を打って進行するといったことにはならないだろうとは想像される。おそらく事態の進展の度合いは、企業側の「人手不足」感と「コスト負担」感との関数で決まるということになろう。

大学生活に何が起きるか

 以上のように、就職活動の多チャンネル化、活動期間の早期化と長期化が生じた場合、何が起きるのか。間違いなく大学は、学生に対して「将来の企業人となるための準備」以外の学びや体験を豊かに提供するという営みに、これまで以上の困難を感じるようになるだろう。人生で一度しか経験できない貴重な学生生活の時間を十分に保障できないばかりか、学生の本分である学業に支障をきたす可能性も強い。

 もちろん「学業に支障が出る」などと書くと、就活ルールが遵守されたとしても、学生は学業になど専念しないではないか、という反論が返ってくることは承知している。それは、そのとおりであろう。理系の学生であれば、自らの専門の学業に専念すれば、そうして獲得した専門性を、就職の際には企業側が評価してくれることを知っているので、懸命に勉強し、実験などに明け暮れる生活を送っている。

 しかし、文系の学生の場合には、そうではない。企業側が採用の際に学業の成果などは評価しないことを、残念ながら見抜いてしまっている。企業側が評価の対象とするのは、大学入試の時点で判明している「スクリーニング」結果と「潜在的能力」や「汎用的能力」に他ならないことを理解しているからこそ、彼らには学業に専念するというモチベーションが沸かないのである。

 それは、立場を変えて見れば、企業側は、学生の学業の成果などは見ないと決めてかかっているからこそ、低学年次にまで前倒しをして採用活動をすることも可能になるのである。