他方、太陽光関係者やFITに詳しい弁護士からは、今回の改正案が遡及的に価格を変更するもので、不当に事業者の権利を侵害するものであるとの意見が多数出されている。全国銀行協会や全国地方銀行協会からも制度変更に対する十分な周知期間がないことや改正による地方経済への影響を懸念する声が挙がっている。

改正案が実現すれば最大で年間1兆円の消費者負担が軽減

 経産省によると、これら未稼働太陽光(約2400万kW)は、次の三つに大別される。

・運転開始制限なし:約1100万kW

・運転開始制限有無 未判明分:約600万kW

・運転開始制限あり:約600万kW

 未稼働太陽光で問題視されるのは、運転開始制限のない案件。運転開始制限有無が未判明の案件のうちの2/3に関しては運転開始期限がないと仮定すると、問題となる未稼働太陽光は合計約1500万kW。これらが全て発電を開始すると、「買取費用の増額分」は年間約7000億円となる。

【写真】未稼働太陽光に厳しい姿勢を取り始めた経済産業省

 それについて、今回の改正案によってどのくらい減額されるか、経産省の公開資料を基に、私なりに仮定を置いて試算してみると、「買取費用の増額分の減額分」は年間約3300〜5500億円。そして、「賦課金の増額分の減額分」は年間約2600〜4100億円、FIT期間の20年間では最大8兆円を超えるが、この分だけ消費者負担増は抑制される。

 一方で、「買取費用の増額分の減額分」は、投資家も含めた太陽光関係者にとっては巨額の逸失利益となる。今回の改正案が実施された場合には、太陽光関係者から損害賠償請求訴訟が起こされる可能性もある。そうなれば、司法判断が期待される。