現代ゴルフともっとも違いを感じるクラブはドライバーでしょう。ドライバーはヒッコリーのシャフトにパーシモン(柿の木)のヘッドです(アイアンのヘッドは金属製)。シャフトの硬さは気の材質や太さで調節することが出来ますが、しなりやすいヒッコリークラブをフルスイングして安定した打球を打つのは相当に困難です。

ヒッコリーのクラブ(筆者撮影)

 モダンクラブはスイートスポットが広いので、多少、芯を外しても方向や飛距離は一定に保たれるのですが、スイートスポットが小さいヒッコリークラブは、少しでも芯を外してしまうと距離を大きくロスしてしまうのです。

 またヒッコリーゴルフで使うボールは、ウレタンなどの樹脂を何層にも重ねて作られている現在のようなものではなく、糸ゴムを巻いた「糸巻きのボール」。ヒッコリー愛好家のために作られた特別なボールを使ってプレーします。通常のボールを使うと、その硬さからクラブヘッドを痛めてしまう危険があります。(昔、パーシモンを使われていた方には分かるかと思いますが、いわゆる「天ぷらマーク」です)

 それだけでなく、ボールを現代の物にしてしまうと過去のプレーヤーとのスコアの比較が成立しなくなります。私は、100年前のコースレコードと比較するのを密かな楽しみとしています。

ヒッコリーだからこそ感じられる名門コースの味わい

 私も初ラウンドのときには、いったい何ヤード飛ぶのか見当もつかず、悩みっぱなしでした。ドライバーの飛距離については、モダンクラブだと260yくらいは飛んでいたものが、200yほどしか飛ばないのです。その結果、モダンクラブではあまり使わないロングアイアンを「これでもか!」というほど打たされて大変でした。

 ところが、です。この日のラウンドは、それまでに感じたことのない楽しさを味わうことが出来たのです。クラブの芯を外せば簡単に飛距離が落ちるし、パターの使い勝手もだいぶ違うなど、細かな難しさはたくさんあったのですが、ゴルフを始めた頃のチャレンジする気持ちが沸き起こったのです。それ以降、私のゴルフはヒッコリーがメインになって行きました。

 ヒッコリーでのプレーを重ねていくと、もう一つ重要なことに気が付きました。100年近い歴史を持つようなゴルフ場(必然的に、名門ゴルフ場と呼ばれるところです)は、現代のゴルファーにとって憧れの場所だと思います。

 ただ、それらのコースはよくよく考えてみれば、ヒッコリーゴルフの時代に設計されたものなのです。ですから飛距離が出やすいモダンクラブでプレーすると、憧れだったはずのコースが「なんだか物足りないな」と感じてしまうことがあるはずです。それもそのはずです。ヒッコリーのクラブでプレーするのに適したコース距離や、グリーンやバンカーの配置になっているからです。つまりせっかくの歴史と伝統を持つ名門コースに繰り出しても、モダンクラブを使ったゴルフだと、そのコースの本当の魅力を味わえずに終わってしまうことも珍しくありません。

 それがヒッコリーのクラブを使うと、コース設計者の意図を感じながら、「じゃあ、ここはこう攻めてみようか」なんていう楽しみ方もできるのです。プレーを通じて100年前のコース設計者との“会話”することができるのです。