準備期間があれば選択肢が増える

 小堺さんは続けて廃業についても指摘した。

「廃業をするときには、基本的には、会社を清算する必要があります。保有している資産はすべて売却し、負債を支払ったのち残ったお金は株主に配当されることになります。ただし一部を事業継承したり、売却する方法もあるので一概にすべてを失う方法と捉えないことも大事です。廃業を考えたとしても、準備期間が長ければ、一部の継承や売買などの選択肢が増えるということです」

 もうひとつ大きなメリットがある。

「逆に廃業のメリットとして、時間がかからないことも挙げられます。先の後継者に譲渡する場合やM&Aでは、それぞれ後継者を探したり、教育したり、または買い手を見つけるのに時間がかかります。とくに業績が悪化している場合などで、誰かに引き継がせるにも難しい場合などでは、廃業という選択肢を考えるケースも多くなるでしょう」

 事業承継は、えてして時間がない中で進むことが多い。特に、ギリギリまで粘って首が回らない状態になってからはじめて相談に来ることもある。そんなとき、早く決着が着くというメリットは大きいだろう。

 いずれの方法を取るにせよ、事業承継を考えるときには、準部期間が長いほうが有利に働くのは間違いない。

 その第一歩は、社長本人が会社のことを知ることだというのが、小堺さんが一番に伝えたいことだ。

「会社のことを知ることで、廃業からM&Aに切り替えることが可能になるかもしれませんし、その際も高く売れる可能性が高まります」

 会社を知る第一歩として、決算書を読み解ける経営者になってほしい。もしそれができるようになれば、いや、そうなろうと思うだけで、現在の窮状を回避することも可能になるかもしれませんから──。小堺さんはそう強調した。