なぜ太くなる? 大根の謎をゲノム解析で明らかに

白くて太い野菜の多様性に迫る(後篇)

2018.11.16(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 三井氏も、遅咲き品種にはこのFLC遺伝子が何かしら関わっていると考えた。FLC遺伝子が変異を起こして働かなくなっていれば、低温で開花する仕組みはなくなるはずだ。

「普通、植物はFLC遺伝子を1個持つのですが、ダイコンではゲノム3倍化があったためFLC遺伝子を3個持っています。研究により、このうちの1個が変異することが、遅咲きになる主な原因のひとつだと分かりました」

 大根の遅咲きを導く主要な遺伝子変異を特定した。この成果は大根の品種改良にもつながりそうだ。

「日本では、遅咲きの品種を作るにあたり、ハマダイコンという野生種の遅咲き個体を交配してきました。でも、ハマダイコンの根は太らず、かつ硬い。交配させると、この特徴の原因となる遺伝子も、作物品種に入れることになってしまいます。遅咲きの遺伝子を特定できたので、この遺伝子だけをピンポイントに入れれば、よく太って品質のよい遅咲きの品種ができるようになると踏んでいます」

野生種の謎を巡る議論、決着へ

ハマダイコン。学名は、Raphanus sativus var. raphanistroides 。(画像提供:三井裕樹氏)

 大根の多様性を探るうえで、近年もうひとつ、大きな進展があったという。三井氏が上で触れた、野生種ハマダイコンの“位置づけ”が定まってきたのだ。

 ハマダイコンを巡っては、「栽培種が野生化した種だ」とする説と、「もとから野生の種だ」とする説があり、研究者たちは議論してきた。

「近年の研究によって、ハマダイコンはもとから野生の種だったことが明らかになってきました」と三井氏は話す。これは、ゲノム解読完了によって多くのDNA情報を用いることができるようになったことが大きい。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。