大多数の人にとって、詩との出会いは国語教科書のなかだ。こんな出会いで詩が好きになるわけないな、と思う。(渡邉十絲子『今を生きるための現代詩』より)

 自分とは違う価値観に出会った時、どうするか。僕はそういう時、いつも俳優の沢村一樹が言ったとされるこの言葉を思い出す。 

“理解できなくていいんです。否定しなければ”

 異なる価値観に出会った時、それを否定するような言説をよく見かけるように思う。おそらく、SNSが発達して、価値観の相違や対立が見えやすくなったためだろう。理解できない価値観は、世の中に山ほどある。しかしだからと言って、それを否定する必要はまったくない。否定しなければ自分に実害が及ぶ、という状況であればやむを得ないだろうが、そういう状況は決して多くないはずだ。

 価値観の多様性こそが、人類を豊かにする。僕はそう信じている。人の体や心を傷つける価値観まで許容する必要はないが、自分に関係ないと思えるものは否定せずにそっとしておく。そういう生き方を実践していきたいと心がけているつもりだ。

 異なる価値観の狭間で苦悩する人々を捉えた3作品を紹介しようと思う。

渡邉十絲子 『今を生きるための現代詩』

 僕は、国語の授業が嫌いで嫌いで仕方なかった。ずっと、なんて意味不明な授業なんだ、と思い続けていた。あるテーマについて皆で考え方を議論するような授業は別にいい。僕が嫌いだったのは、文章や作品全体をある一通りの解釈に押し込めようとするやり方だ。

 その時主人公や作者がどう感じていたかなど、読んだ人それぞれが自由に感じればいい。なぜそこに「答え」が存在するのか、僕にはずっと理解できなかった。なぜそういう読み方を強制しようとするのか、まるで理解できなかった。今でも理解できないままだ。