日本国内でのデジタル先進企業の勃興と、揺るがぬ伝統的な大企業との立ち位置の対比は、日本がイノベーション後進国であり、衰退傾向にあるという論をしばしば招いています。

 そうなってしまう原因の多くは、大企業が過去の成功体験に囚われ続けていたり、新興技術との向き合い方が分からなかったりすることに起因しています。ただし、そこで適切なアプローチをもって先進企業と向き合えば、伝統的な日本企業が持っているポテンシャルをフルに発揮し、一気に成長を加速することも可能です。

 本稿では、そうしたアプローチの1つとしてオープンイノベーションに焦点を当て、その取り組み方を2回に分けてご紹介します。

オープンイノベーションを改めて定義する

 まず、オープンイノベーションの意味について、言葉自体は広く使われながらも、具体的にどこまでを含むのか分かりにくいという声をよく耳にします。ここで取り上げるオープンイノベーションとは、自社以外の新興企業やスタートアップ、大企業、学術・研究機関などの外部のアイデアや知識を、自社のバリューチェーンに取り込み、また社内外からの知識を有機的に結合し商用化する手法1を指します。

 これは、企業の基礎技術の研究開発のために知識を取り込むことや、基礎技術の応用において他社と協業することと言えます。または、自社と他社のアイデアや技術を組み合わせることで製品やサービスを共同開発したり、他社の知識を活用して企画、設計、開発や管理業務のプロセス課題を解決したりする方法でもあります。

 また、企業の外からでも把握できるオープンイノベーションの活動があります。例えば、自社が抱える課題を掲示し、他社が解決策を提案(ピッチ)するコンテストや、共通事案や課題に対して知恵を出すアイデアソン、実際にハードウェアやソフトウェアの開発も行うハッカソンなどのイベントです。

オープンイノベーションのメリット

 では、オープンイノベーションのメリットとは何でしょうか。

 それはなんといっても、他社との協働による「活動スピードの向上」です。他社との協働によって研究開発のスピードを30%も向上できる場合もあります2。研究開発のスピードが上がれば、製品・サービスを迅速に市場に投下できますから、上市までの人的なコストの削減や、先行者利益の獲得が可能になります。現に、大企業とスタートアップの協業において、企業の収益性に正の相関性が見られるのです3

 また、副次的な効果として、オープンイノベーション活動にスポットライトを当てたマーケティングの効果や4 、社外の人材やその知識に自社人材が触れ合うことによる、自社人材の知的な啓発も期待できます。

日本企業のオープンイノベーションの現状と阻害要因

 グローバル市場においては、コツコツと持続的な成長を遂げてきた企業を、新興の事業・サービス会社が猛烈なスピードで追従し、凌駕するケースが相次いでいます。2007年から2017年までで、グローバル企業の時価総額のトップ10は激しく変動し、10年間トップに居続ける企業は半数以下です。現状ではグーグルやフェイスブックといった新興企業がランキングの上位に位置し、上位10社の企業価値を加算した総額は10年前の1.6倍となっています5

1 Henry W. Chesbrough(2003), Open innovation, The New Imperative for Creating and Profiting from Technology, Harvard Business School Press, P43

2 Shimizu et al(2015), Collaboration and Innovation Speed: Evidence from a Prize Data-Set, 1955-2010, Hitotsubashi University Institute of Innovation Research, P4​

3 Accenture Research(2015), Digital Collaboration Index Focus:Japan, P4​

4 川上智子(2015), オープン・イノベーションの広がりは技術分野に留まらない共創の時代は到来するか, Harvard Business Review, http://www.dhbr.net/articles/-/3206?page=5, access on 2018/10/04

5 Accenture Global Consumer Pulse Research https://www.slideshare.net/Accenture_JP/ss-79754137