江戸時代は100種以上、日本人と大根の根深き関係

白くて太い野菜の多様性に迫る(前篇)

2018.11.09(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

「青首大根」大流行で多様性から均一性の時代へ

 結局、江戸時代全体で130種もの大根が栽培されたという。だが、近代に入り、市場では作物取引の自由化が進み、全国では輸送交通手段が発達していった。これらの利便性向上は、むしろ大根の多様性を低め、均一性を高めることにつながったという考え方もある。地元ならではの品種にこだわるより、生産効率の高い品種を多量に作って市場に送り込むほうが、収益は上がりやすい。

 1974年には、現代の大根のイメージを決定づける新品種が世に誕生した。「耐病総太り」がタキイ種苗から発表されたのである。耐病性、栽培性、そして食味を兼ね備えた革新的な品種で、農地や市場を席巻した。根の上部が緑色を帯びた「青首大根」の宮重大根をもとに開発されたため、「大根といえば青首大根」といった印象を人びとは強く抱くようになっていった。近年では、国内の市場に流通する大根の9割が、青首大根とされる。

青首大根。

 人びとの心の中では、大根の多様性は薄まってしまったかもしれない。だが、多種多様な大根の品種が日本で生み出されてきたのは事実だ。日本の大根は世界で最も変化に富んでいるとも評され、各地では地大根の復活を試みる取り組みも見られる。

 科学の視点も注がれている。ゲノムや遺伝子を調べることで、大根の多様性を追究する研究が進んでいるのだ。研究者に話を聞いてみよう。

(後篇へつづく)

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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