果物の「食べ頃」「当たり外れ」を見極める方法

甘味と酸味のバランスが風味の決め手

2018.11.02(Fri) 佐藤 成美
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 同じ果物でも品種で糖の組成は変化し、風味が異なることもある。メロンはショ糖を多く含み、濃厚な甘さが特徴だ。だが、同じメロンでもマスクメロンは、爽やかな甘さで、ブドウ糖や果糖が多く含まれることが知られている。

果物が熟すことで食べてもらうという生存戦略

「熟す」とは、果物が食べ頃になること。熟すと果物が甘くなるのは周知のとおりである。果実が成長している間は硬くて酸っぱいが、成長し終わると、色づき、それとともに香りが増し、甘くなる。果肉も柔らかくなり、酸味が減って食べ頃になる。

 このように果実が熟すのは、植物が子孫を増やし、分布を広げるためだ。植物は動けないので、種を鳥など他の生き物に運んでもらわなければばらない。そこで食べ頃の色や香りで動物をひきつけ、甘くておいしい果実を食べてもらう。硬くて食べられない種子を吐き出したり、糞をしてもらえば、種をばらまくことができる。秋に熟す果実が多いのは、冬鳥が多く飛来し、冬に備えてたくさん食べる動物も多いからだという説もある。

 イチゴやリンゴ、ブドウ、スイカ、日本ナシなどでは、果実が成長して食べ頃になるまで待って収穫するが、メロンやキウイ、マンゴー、西洋ナシなどでは、追熟が必要だ。追熟とは、収穫した果物を食べ頃になるまで待つことを指す。傷みやすいバナナや桃は未熟なものを収穫し、輸送中に追熟させて食べ頃にする。熟してから出荷するとあっという間に食べ頃を過ぎてしまうためだ。

風味を変化させるエチレンガスは諸刃の剣

 成熟期になると、果実はエチレンガスを発生する。エチレンガスは、果実の成熟を促す役割を担っている。リンゴやバナナといっしょにキウイフルーツを保存するとよいとよくいわれるのは、リンゴやバナナがエチレンガスをたくさん出すことで、キウイフルーツが早く甘く柔らかくなるからだ。エチレンガスが発生すると、細胞内の酵素の活性が高まり、色素成分や芳香成分が合成される。酵素の作用で果肉も柔らかくなる。

 成熟の過程で糖の構成も変化する。光合成によりできたブドウ糖は果実に蓄積されるが、成熟している間に果糖などの他の糖に変わるためである。追熟では、蓄えられたデンプンが分解し、他の糖になる。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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