では、制度を変えられるのかというともちろん簡単ではない。

 高齢社会の到来というのは、当たり前だが、有権者に占める高齢者の比率もそれだけ高まったことを意味するからだ。

 地下鉄の赤字問題にしても、高齢者の無料制度に一因があるにせよ、ではすべての原因がここにあるのか。

 経営上の改善項目はほかにもあるはずで、それらを改善した後か、それらの改善策とセットで制度改正を提案するのなら受け入れられるが、そうでなければ高齢者の反発は必死だ。

 高齢者の有権者の反発は怖い。

高齢者の貧困率と雇用率が最高

 社会福祉政策としても無料化はなかなか改正に踏み切りにくい問題だ。韓国では、高齢者の経済状況を示す2つの統計が最近明らかになった。

 1つは、「高齢者貧困率」。

 韓国の統計庁によると、65~69歳の相対的貧困率が45.5%だった。一方で、70~74歳の雇用率は33%だった。いずれもOECD(経済協力開発機構)加盟国で最高の数字だった。

 「貯蓄がないから老人が働く国」…大手紙「中央日報」はこんな記事を掲載した。

 こういう状況だから、政府も、「高齢者の地下鉄無料制度は廃止します」とは言い出し切れないのだ。

 赤字が雪だるまのように増えつつある中で、ソウル地下鉄は深刻な構造的課題を抱えている。急速な高齢化の一断面でもある。