田原 制作費は、下手をするとキー局の10分の1ぐらい?

大川 正直に告白すると、いまは1時間100ウン万円ぐらいですね。

田原 じゃあやっぱり10分の1くらいだね。

今なら杉田水脈議員を擁護した言論人との討論が面白い

大川 そういう中での番組制作ですから、なんていうのか、あまり色も付けられないわけです。早い話が、出演者の方にうまくしゃべってもらうしかできないんですね。

田原 それで十分面白い番組が出来ますよ。

 ところで僕は、ひと頃は『5時に夢中!』も、MXの他の番組にも出ていたんだけど、最近は全然声掛かんない。なんでなのかな?

大川 いや、あの、田原さんは大物過ぎてっていうのと、以前出ていただいていた頃と比べて制作費も削られてしまったという状況もありまして。

田原 僕は高いギャラなんて要らないよ。それよりも、声が掛からないのは、僕がつまらなくなったからなのかなと思って。

大川貴史:東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)制作局長。立教大学卒業後、TOKYO MXに1期生として入社。営業部、CM運行部、スポーツ部での勤務を経て、制作局へ。そこで立ち上げた『5時に夢中!』を局の看板番組に育て上げ、マツコ・デラックスらのスターを数多く輩出。著書に『視聴率ゼロ! 弱小テレビ局の帯番組「5時に夢中!」の過激で自由な挑戦』がある。

大川 いえいえ、そんなことは・・・。田原さんと対等にやり合える人も見当たらないので、それで・・・。

田原 『新潮45』で杉田水脈擁護の記事を書いた小川榮太郎とか、あるいは産経新聞の阿比留瑠比とか、ああいう保守派の人と論争したっていい。

 僕じゃなくても、ジャーナリストの青木理とか、評論家の佐高信とか、ああいう人たちと小川榮太郎とを対決させるとかね。大川さんなら、そういう面白み、分かると思う。普通のテレビ局のプロデューサーだったら、「そんな怖い組み合わせ、嫌だ」と思うかも知れないけど、大川さんだったら怖いことの面白みも分かるでしょう?

大川 そうですね。

田原 もちろん会社員だから、「ここから先はやばい」というラインも分かってると思うから、そのギリギリの線で勝負してもらいたいんですよ。

大川 わかりました。頑張ります。

田原 ところで、これからどうするの?

大川 これから?

田原 制作局長になったでしょう。ということは番組作りの現場にはタッチしていないの?

大川 局長になったので全番組の面倒を見なきゃいけない立場になりました。具体的には、朝の『モーニングCROSS』っていう堀潤さんがMCをしている番組から、夜の『バラいろダンディ』まで、毎日スタジオで帯番組を4本見ています。

田原 そんなに番組を抱えていたら、それぞれの番組に目が届かなくなるんじゃないの。

大川 そういうこともありえます。だから、部下も育てつつ、ということになります。

田原 だったら過激なプロデューサーを育てなきゃ。

大川 はい。

 それに加えて、うちの会社の場合、会社が赤字になりそうになったら番組をすぐにやめたがる傾向があります。経営基盤が盤石じゃないので仕方がない部分もあるのですが、制作局長としては番組を守らなきゃいけない。やっぱり番組って、いろんな人の協力があって成り立っているものなので、「お金が回らないから、やめよう」みたいな結果にはしたくない。工夫できるところは全部やっていこうよ、みたいな態勢で臨んでいるので、日々、明日のことにも頭が回らない感じです。